◆会いに行った人
砂田柊真さん(岐阜市立長良西小5年)
ロックとの共演かなえ
山井綱雄さんは1400年の歴史がある能楽最古の流派「金春流」の能楽師です。山井さんが出演した「義経記」を見て、そのなめらかな動作に感動したという砂田柊真さんが東京都渋谷区の国立能楽堂でインタビューし、能を体験しました。
山井さん 舞台に上がってみましょう。能舞台は日常とは違う空間です。能面をつけるということは、「人間じゃないもの」になること。だから普段とは違う動きをします。
柊真さん 能面の視野はどのくらい狭いのですか?
山井さん 能面を持ってきているからつけてみようか。岐阜で「義経記」を見てくれたんだよね。あのとき一番難しかったのは、静御前の役です。激しい動きよりも、静かに動く方が難しい。同じ種類の能面がこれです。無表情に見えるけど、傾けるとうれしそうになったり、悲しそうになったりするでしょう。つけて少し動いてみましょうか。どんな感じ?
柊真さん あまり前が見えないです。
山井さん そうでしょう。ほとんど見えないから、実は種明かしをすると、舞台の四方の柱を目印にしてるんですよ。あの柱がなくなったら、能楽師は舞台からバラバラと落ちます(笑い)。
柊真さん 義経記では、ロック歌手のデーモン閣下と共演していました。なぜジャンルの異なる人たちと一緒に活動するのですか?
山井さん 柊真さんのように、いろいろな人が能に興味を持ってくれるといいな、と思っているんですよ。
柊真さん 子どものころの夢は何でしたか?
山井さん ちょうどぼくが柊真さんくらいの小学生のとき、初めてテレビでデーモン閣下たちのロックバンド「聖飢魔2(せいきまつ)」を見て大ファンになりました。それからギターを練習してバンドを組みました。ぼくの夢の一つは、あこがれのデーモン閣下と同じ舞台に立つこと。「義経記」でかなったんです。10年くらい共演しているんですが、今でも信じられないです。
柊真さん どうしたら夢がかないますか?
山井さん 心にためているより、いろいろな人に語るべきだと思います。きっと助けてくれる人がいるから。「有言実行」です。黙っていたら誰もわからないでしょう。【まとめ・斎藤広子】
会ってみて…
砂田さん とても優しい人で、舞台に上げてくれて、能について丁寧に説明してくれたので、「能面の視野がどのくらいせまいのか」とか、疑問に思っていたことがよくわかりました。「夢はどんどん話した方がいい。助けてくれる人がいるから」という言葉が一番印象に残りました。
1973年生まれ、横浜市出身。国学院大学卒。金春流能楽師だった祖父の影響で5歳で初舞台。小学6年で初シテ(主役)「経政」を務めた。趣味はロックバンド活動とプロレス観戦。
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