水分が抜け、栄養が凝縮
Q 生の魚をくん製にすると栄養成分は変わってしまうのですか。(東京都渋谷区、小3、青島優人さん)
A くん製とは熱と煙でいぶしながら乾燥させることです。魚はくん製にすることでより長く保存できるようになります。その一つがみなさんもよく知っているかつお節です。生のカツオを切って煮た後に何回もいぶし、特別なカビを植えつけます。かつお節の作り方に詳しいにんべん研究開発部の荻野目望さんに聞きました。
日本近海のカツオは、春にとれるものは「初ガツオ」、秋にとれるものは「戻りガツオ」といいます。戻りガツオは東北や北海道沖まで北上したカツオが秋になって北から南に帰る途中で、北の海で身に着けた脂をまとっています。荻野目さんによると、かつお節には脂の少ないものが好まれるため、春どりのカツオと熱帯の海のカツオを主に使います。食品の栄養成分のデータをまとめた「日本食品標準成分表2015年版」で、春どりの生ガツオとかつお節の栄養成分を比べました。
100グラム当たりの量で比べると、かつお節の方が、ほとんどの栄養成分が多いです。たとえば、たんぱく質は約3倍(77・1グラム)、カルシウムは約2・5倍(28ミリグラム)、ビタミンB1は約4・2倍(0・55ミリグラム)になります。「水分が減ることで、栄養成分が凝縮される」(荻野目さん)ためです。ただし、生のカツオに豊富に含まれていたビタミンB6は、煮る際に減ってしまい、約7割(0・53ミリグラム)になります。わずかに含まれていたビタミンAは5マイクログラム(1マイクログラムは100万分の1グラム)から、検出できないほど少ない値まで下がります。
荻野目さんによると、かつお節は主に熱と煙でいぶして乾燥させることとカビを植えることで、水分が減ります。1か月かけて12~13回いぶすことで、水分は22~25%ぐらいにまで低下するといいます。「私たちがいぶさずに乾燥だけしてみたところ、身は黄色に変化して生臭くなってしまいました。いぶすことで、水分が抜ける上に、脂の変化を防いで生臭くなるのを避けられます。さらに煙の成分によって、菌が増えるのも防げるし、良い香りをつけることもできます」とくん製の効果を話していました。【斎藤広子】