授業中に眠くなってしまった経験がある人は少なくないのでは。居眠りをしないよう、午睡(昼寝)をしっかりとろうという試みがあります。授業の合間に午睡タイムを設けている、兵庫県や宮城県の小中学校の取り組みをリポートします。【長尾真希子】
全校で「午睡タイム」
「今からシエスタを行います。しっかり休憩をとり、午後からの授業や部活動を頑張りましょう」。兵庫県加古川市立加古川中学校の午後1時10分。アナウンスに続いて、オルゴールの音楽が流れ始めると、電気を消し、カーテンが閉められた薄暗いそれぞれの教室で、約1000人の全校生徒が一斉に机に突っ伏しました。15分間のお昼寝タイムのスタートです。
名付けて、「加古川シエスタ」。「シエスタ」とはスペインなどで伝統的に行われている「昼寝」を意味します。生徒会が提案し、心にゆとりを持つ「心のシエスタ」と節電を心がける「エネルギーのシエスタ」を2本柱に、昨年からテスト期間前の1週間に実施するようになりました。
3年生で生徒会長の奥野匠さん(15)は、「午後の授業や部活動に集中して取り組めるようになった。『加古川シエスタ』を伝統にすべく、今後もみんなの声を反映し、改善していきたい」と抱負を話してくれました。
遅刻も減少
一方、2014年6月から午睡タイムを設け、効果を実感しているのは、宮城県大和町立吉岡小学校です。午睡タイムを設けたきっかけは、その年の春にやってきた角田研校長(59)があることに気づいたからだそうです。
当時、吉岡小では、遅刻する子や授業中、教室に入らず、校舎をうろうろし、落ち着かない子どもたちが多かったといいます。4~6年生を対象にアンケートを実施したところ、8時間以上寝ている子どもは6割しかいなかったそうです。そこで、「生活リズムが狂っているからでは?」と考えた角田校長は、給食に続き、清掃終了後に、モーツァルトの音楽に合わせて15分間の午睡タイムを始めたところ、子どもたちの学力が上がり、保健室を利用する子どもが減り、遅刻や校舎内をうろうろする子どもがいなくなったそうです。子どもたちが作った壁新聞にも、昼寝の良いところとして「あたまがスッキリする」「じゅぎょう中ねむくならなくてすむ」「午後からやる気がでる」などの声が挙がっていました。
夜の眠りにつながる
保護者へのアンケートによると、「午睡が夜の睡眠につながった」という意見が多かったといいます。角田校長は「午睡することで、授業が理解できるようになり、学習意欲が向上しました。生活リズムが身についたことで、土台がしっかりし、いいことずくめです」と話していました。学校には、全国から問い合わせが相次いでいるそうです。