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集めた物で個展と講演
大人顔負けの活動をしている小学生が各地にいます。自然科学に対する興味が「すっごい」のは、東京都品川区の小学6年、吉田航輝さん。自分の関心ごとを広げるうちに集めたコレクションが増え、個展やトークショーを開いています。
幅広いトークの話題
吉田さんは8月下旬の5日間、東京都品川区のギャラリーで、自然科学の収集物を紹介する個展「航輝の博物個展2」を開きました。会場には、鉱物やはく製、化石、昆虫標本、望遠鏡などが所狭しと置かれます。集めたものは「化石が発掘される場所に行って拾ったり、博物館で買ったり、自然科学の研究者からもらったりした」と吉田さんは話します。
会場では、不定期に10~15分のトークショーも披露しました。話題は、宇宙や化学、昆虫などにまで広がります。ノーベル賞の受賞で話題になったスーパーカミオカンデをテーマにしたときは、「まわりの坑道は寒かったのに、入った瞬間暖かくて、感動して涙が出た」などと、実際に訪れた感想とともに話しました。会場を訪れていた絵本作家のかわさきしゅんいちさんは「航輝君は知的好奇心が人一倍あって、話すときにも自信がある。小学生とは思えない姿で刺激になります」と話していました。
自然体験を現場で
吉田さんが自然科学に興味を持ったのは、幼稚園時代にさかのぼります。当時、東京都千代田区にあった「自然環境情報ひろば丸の内さえずり館」を訪れたことをきっかけに、自然と触れ合う楽しさを覚えました。それ以来、昆虫や海洋動物の化石、骨、植物、元素、素粒子などの関心を高め、博物館や野外施設など、実物に触れられる場所に出かけてきました。
吉田さんのお母さんは「さえずり館のスタッフの方々から『好奇心旺盛な個性をつぶさないように』と言われてきました。一緒に木の実を拾ったり、虫をとったり、テレビの宇宙や動物の専門チャンネルを一緒に見たりしてきた」と話します。小学4年で初めてトークショーを披露したときは、練習をしないですらすらと言葉が出てきたそうです。「少し笑える要素を入れたり、一つのテーマで15分ぐらいの長さにして、みんなが飽きないような話し方にしています」と吉田さん。吉田さんのお父さんは「小さいころから博物館などでトークショーを見てきたから、自然に話すペースを覚えたのかもしれない」と分析します。
人とのつながりを大事に
吉田さんは小学3年生のときから毎年夏休み、大きなスケッチブックに自由研究をまとめています。きっかけは、「さえずり館」の所蔵物だった希少なセミクジラのひげを譲ってもらったことです。図鑑などで調べたことや研究施設で聞いた話も加え、まとめました。それ以来、毎年ミツバチ、DNAなどをテーマに研究し、そのたびに専門家の方々から話を聞く機会を得ました。自宅には、マンボウ研究家の澤井悦郎さんから譲ってもらったマンボウの皮や数々の化石なども展示されています。研究現場で働く人たちと身近に接する中で、将来描く夢も明確になってきました。吉田さんは「専門は一つには絞れないけど、将来は研究者になりたい。イグノーベル賞ならねらえるかな」と話していました。【浅川淑子】=つづく