四国に行くと、白い服装につえをついて道を行く人の姿を時折見かけます。四国4県の寺を巡ってお参りする「お遍路」です。テレビで見たことがあるかもしれません。でも何のため? どうやって? いつからあるの? 頭の中が「?」だらけの知りたいんジャーから、早速質問が飛び出しました。【長尾真希子】
そもそもお遍路って何?
1200年前から続く遍路とは、平安時代に活躍した仏教界の大スター、空海(弘法大師とも呼ばれます)ゆかりの88の寺を巡って四国を一周する旅のことです。88か所をまわると、88のぼんのう(心を乱す欲望)がとりのぞかれて、88の良いことがあるとされています。平安時代に僧侶がやり始め、江戸時代以降に一般の人もするようになりました。現在は、健康を願ったり、人生の節目や大切な人を亡くしたことがきっかけになったりと、さまざまな理由で多くの人が体験しています。
聖地を巡る「巡礼」の旅は世界中にありますが、「遍路」と呼ばれるのは四国八十八か所巡礼だけ。四国八十八か所を巡礼する人は「お遍路さん」と呼ばれ、年間約15万人いるそうです。
88の寺を順に巡ると約1400キロメートル。歩いて回ると、40日以上かかります。巡礼のコースが輪っかのようにつながっているのは世界的にも珍しく、外国人の「お遍路さん」も多いそうです。
なぜお寺のことを札所と言うの?
お遍路さんが巡る88の寺を「札所」と言います。お参りするとき、名前や願い事を書いた納札という札を、本堂や大師堂にある納札箱に納めていくからと言われます。納札は今は紙ですが、江戸時代は木でできていて、お堂に打ち付けていたそうです。そのため、お参りすることを、「打つ」とも言います。
札所には番号がふってあり、1番から順に回ることを「順打ち」、88番から反対に回ることを「逆打ち」、一気に参拝することを「通し打ち」と言います。ほかにも、最初の札所を打つことを「発願」、札所を全部回り終えることを「結願」と言います。専門用語をマスターすると、「通」っぽく聞こえますね。
お遍路さんの服装って?
菅笠をかぶり、白い装束で巡るのが伝統的な服装です。つえは弘法大師の化身ともいわれ、ほかにも手甲、脚半など、全身をお遍路グッズで固めると1万円ほどかかります。しかし、実際には身だしなみが整っていれば、どんな服装でも構いません。
ただ、首にかける輪袈裟と、お参りに使う数珠は用意するようにしましょう。これに白衣を着ていれば、周囲の人にお遍路さんとわかってもらえます。すると、地元の人たちがお遍路さんを食べ物や飲み物でもてなす「お接待」を受けられたり、あいさつや励ましの声をかけてもらえたりします。
歩かなきゃダメなのかな
札所から札所へ、お遍路さんが通る道を遍路道と言います。
きれいにアスファルトで舗装された道もあれば、岩がごろごろしているような険しい山道もあります。中には、「遍路ころがし」と呼ばれる危険な山道もあります。江戸時代のお遍路さんも歩いた昔ながらの遍路道が残っているところもあり、地元の人たちが大切に守っています。
お遍路の手段は、昔は徒歩だけでしたが、今では車で巡る人、旅行社のバスツアーに参加する人などさまざま。週末や連休を利用し、少しずつ遍路道をたどる「区切り打ち」が多く、月1回ペースで巡り、1年かけてすべてお参りするツアーが人気です。個人で巡る場合は、地図やガイドブック、徒歩の人は履き慣れた歩きやすい靴、雨具や虫よけなどを準備しておくと安心です。
子どももできるの?
お遍路って大人になってからするもの? いえいえ、そんなことありません。小学生でもお遍路さんを体験できるプログラムがたくさんあります。
寺の住職や旅館、ホテルなどが集まってつくった「四国八十八カ寺巡礼推進会議」(愛媛県松山市)では、夏や冬の長い休みに合わせて、小3から中3を対象にお遍路ツアー「子供遍路塾」を開いています。2泊3日で8~10か所ずつお寺を巡ったり、「お接待体験」もします。
また、コースの道路の掃除をしながらお遍路の文化に触れるプログラムや親子で参加できるイベントなどもあるので、調べてみてください。