自民党の杉田水脈衆院議員が月刊誌への寄稿でLGBTなど性的少数者について「子どもを作らない、つまり生産性がない」などと主張した問題で、自民党本部前で杉田氏の辞職を求めて抗議する人たち=東京都千代田区で2018年(平成30年)7月27日、宮間俊樹撮影
山田道子 毎日新聞 紙面審査委員
毎日小学生新聞は7月24日に「LGBT」について4ページにわたって特集していましたね(一部地域は25日)。「LGBT」とは性的少数者の総称で、英語の頭文字、レズビアン(女の人を愛する女の人)のL、ゲイ(男の人を愛する男の人)のG、バイセクシュアル(男の人、女の人どちらも愛する人)のB、トランスジェンダー(心と体の性がちがう人)のTを組み合わせたものです。
LGBTの人たちに対する差別をなくして暮らしやすい社会にしようという動きが高まっています。毎小の特集もその一つでしょう。ところが最近、自民党の杉田水脈衆議院議員が「LGBTのカップルは子どもを作らない。つまり『生産性』がないのに税金を投入していいのか」という内容の文章を月刊誌に書きました。
毎日新聞はいち早く7月21日にウェブサイトで取りあげ、24日朝刊では、「優れた人間」を選別し、「劣った人間」を排除する「優生思想」だとの批判が起きていることを報じました。25日朝刊の社説では「杉田水脈議員の差別思考 国民の代表とは呼べない」と「差別発言」であることをはっきり指摘しました。
メディアが差別問題を報じる時、気をつけなければならないことがあります。「どっちもどっち論」にならないことです。「どっちもどっち論」とは「差別はよくないが、差別される側にもよくない部分がある」という理屈。アメリカのトランプ大統領が白人至上主義者(白人こそが最も優れていると考える人)と反対派が衝突した事件で「両者に非がある」と述べ、「人種差別を容認するのか」と批判を浴びました。
みなさんが友達と口げんかをすれば、「どっちも悪い」となるかもしれませんが、差別問題については、差別する側に非があり、される側に非はないことを明確に伝えなければならないのです。「どっちもどっち論」、気をつけてくださいね。
政治部、夕刊編集部で政治を長く取材。週刊誌「サンデー毎日」の編集長を務めた。新聞の外から新聞を見る経験をして、メディアに関心を持つようになった。1961年東京都生まれ。