ばったり友人に会った。
「あっこ変わらないね。部活のみんな元気かな」
「たまに集まるよ、クリちゃんは結婚して、よっしーは今海外にいて」
……呼ばれてない。
「ハ、ハナエ忙しそうだし」
ぎこちない笑顔で、バイバイ、と別れた。
「中国武術部」。カンフーの型を、コーチから教わる。三節棍や刀、剣などの武器を使う人と、わたしのように何も持たず「ハッ!」と技を決める人がいた。
高校2年生の終わり。引退も近づき、最後に武器をやってみたいとコーチに申し出ると、部室から刀を持ってくるように言われた。
憧れの武器の王道、刀。
「武器を使ってこなかった人こそ、基礎がしっかりしている。すぐに技ができるぞ」とコーチは言い、次々に技を教えてくれた。勢いよく刀を突き刺して音を鳴らしたり、頭の周りですばやく振り回したり。先輩たちや脇のバスケ部員たちから「かっこいい!」という声もあがる。
そのとき。りんちゃんが体育館の舞台に突っ伏し、うわー!と声をあげて泣き始めた。彼女は1年生の頃から刀をやってきた。どうしたのかと、近づこうとすると「こないで!」とにらまれ、怒鳴られた。
コーチの指導が終わってもりんちゃんはまだ静かに泣き続け、周りに5、6人なぐさめている子たちがいた。あっこがその輪から離れた。
「ねぇ、どうしたの」
あっこに聞いてみた。
「ハナエがやった技は、りんちゃんが、1年くらいたってからやっと教えてもらったものなんだって」
そうか。今日初めて刀を触った程度のわたしが教わっているのを見て、頭にきたわけか……。
翌週、わたしは退部届を出した。
「りんちゃんもあの時は余裕がなかったんだよ。今、部活をやめたら、りんちゃんも気にするよ。直接話してみなよ」と何人かから言われた。でも、居心地が悪いところにいるなんてバカバカしい、とわたしは切り捨てた。
それきりだ。今、みんなの集まりで、声もかからないのは、当然だろう。
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『あの人が同窓会に来ない理由』では、宏樹が同窓会の幹事を任され、少しでも多くの同級生を呼ぶように言われます。30歳も過ぎると年々出席者は減ってきます。そこで、連絡がとれない同級生たちが今どうしているか、宏樹は自力でたどり始めるのです。
やがて中学時代のある事件の真相が明らかになります。当時もっと素直になっていれば、とため息が出るなんとも悲しい事件です。
わたしもあのとき、意地を張りすぎたかも。同窓会に行けないって思っていた以上に寂しいものです。
『あの人が同窓会に来ない理由』
はらだみずき・著
幻冬舎文庫 702円
エッセイストの華恵さんが、本にまつわる思い出や好きな本を紹介します