Q 歯が生えるとき、歯ぐきを突き破るのに痛みを感じないのはなぜ?(東京都練馬区、小5)
破歯細胞のおかげ? まだ分かっていない
A 日本歯科大学教授の菊池憲一郎さんは「おもしろいところに目を付けましたね」と感心していましたが、「実はよく分かっていないのです」と答えてくれました。痛みは人によって感じ方が違ううえ、痛みを感じるかどうかは本人にしか分かりません。実験するのも難しいので、分からないのだそうです。
編集部に寄せられたはがきには、質問とともに「抜ける歯のあたりの、歯ぐきの神経細胞が破壊され、痛みを感じなくなるのではないかと考えました」という予想も書いてありました。「おそらく正解です」と菊池さん。現在、いくつかの説があり、一番有力なのが、これなのだそうです。
歯が生え変わるときは、乳歯(子どもの歯)の下の骨の中から永久歯(大人の歯)が出てきます。この時、「破歯細胞」(破骨細胞とも呼ばれます)が出てきて、骨や乳歯の根っこ、痛みを感じる神経を食べて、永久歯が出てくるための通路を作ります。このため、痛みを感じにくいとされています。
歯は通常、歯ぐきの上に見えているところよりも、歯ぐきの中やあごの骨に埋まって見えない部分の方が、長くなっています=写真<左>(ひだり)。しかし、みなさんも見たことがあると思いますが、生え変わって抜けた乳歯は、根っこの部分がほとんどなくなっています=写真<右>。これは、破歯細胞が、根っこの部分を溶かしてしまったからなのです。
永久歯は、すべてが乳歯と生え変わるわけではありません。「六歳臼歯」と呼ばれる奥歯は、5、6歳ごろに初めて生えてくる永久歯ですが、もともと乳歯がないところに、破歯細胞なしで生えてきます。しかし、それほど痛みを感じることがなく、本人も気付かないうちに出てきます。
これは、歯が歯ぐきの肉を少しずつ押し上げて生えるときに、肉の組織が圧迫されて死んでいき、痛みを感じなくなるのではないかと考えられています。
赤ちゃんに歯が生えるときも、破歯細胞は関係しません。生後6か月後くらいの、乳歯が生え始めるころの赤ちゃんは、むずかって泣いたりすることがあります。菊池さんは「赤ちゃんに聞くことはできませんが、もしかしたら、歯が生えてくるのが痛いからなのかもしれませんね」と話しています。【大井明子】<え・内山大助>