かこさとしさんの初の刺繍「ありちゃん あいうえお」と、もとになった冊子を手にする長女の鈴木万里さん(右)と孫の亀津鴻(ひろき)さん
昨年5月に92歳で亡くなった絵本作家かこさとしさんの初の詩集「ありちゃん あいうえお」(講談社)が5日、出版されました。かこさんが孫の成長を見つめながらつづった詩は、優しいまなざしにあふれ、おじいちゃんとしての一面がうかがえます。
優しいまなざし、孫の成長見つめ
「だるまちゃん」シリーズや「からすのパンやさん」など約600点もの作品を手がけたかこさんは、ふだんから詩や俳句をノートに書き留めていました。亡くなる10日ほど前、訪ねてきた出版社の編集者に「詩を書きませんか」と持ちかけられ、照れながらもうれしそうにしていたそうです。
詩集は「ありちゃんあいうえお」と「まごまごのうた」の2部で構成されています。書斎の本棚に残されていた冊子2冊がもとになっています。「ありちゃん あいうえお」は、子どもたちが楽しく言葉を覚えられるように、50音ではなく濁音と半濁音を加えた71音の「ことばあそび唄」。「ぱんだちゃんのぱーてぃーです。ぴんぽんしてからぴくにっく……」など、かこさんならではのあそび唄です。
「まごまごのうた」は、孫の「たっくん」「ひろちゃん」の成長を見つめた約40編から選んだ12編です。長女の鈴木万里さん(61)は「(父には)初めての孫、しかも自分の子どもは女の子だけだったので、男の子の孫2人に、まさに『まごまご』しながらあやしたり、遊んだりしていました」と振り返ります。
「たっくんは たいようです まぶしくって あったかで ぽかぽか なみだが にじみます」で始まる「たっくんのうた」や、「歩行器バス ひろちゃんをのせて」などが収められています。
孫の亀津鴻さん(25)は「詩があることは知りませんでした。自分に向けられた愛情を目にすることができて、うれしくもあり、はずかしくもあります」。鈴木さんは「子どもたちにも、かつて子どもだった大人にも楽しんでもらいたい」と話しています。【篠口純子】