カラタチの木にはナガサキアゲハのサナギがいた=福家多恵子さん撮影
丸まった姿がかわいいダンゴムシ一家。ワラジムシも混じっている=福家多恵子さん撮影
Q 冬の間、公園の虫が何をしているのか知りたいです。(神奈川県鎌倉市、小1、男子)
土の中で眠るアリ、チョウはサナギで
A 暖かくなってきて、公園にも虫が少しずつ出てきましたね。では、冬の間はどこで何をしていたのでしょうか。国立科学博物館協力研究員で昆虫学者の小松貴さんに聞きました。
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アリは、寒くなる前の秋の初めくらいから、土の中で活動しないで寝ています。食べ物はどうするのでしょう。アリは、花の蜜などの液体を体の中に蓄えることができます。胃袋の手前に「社会胃」という器官があり、ここにエサをため込み、冬の間に少しずつ吸収します。このエサは、仲間のアリにも分けてあげることができます。
出歩くアリも
寒くなってから外に出てくるアリもいます。クロナガアリです。夏の間は土の中で寝ていて、他のアリが冬眠の準備を始めるころ、エサの植物のタネを探しに出てきます。冬でも暖かい日があると、外にいます。
チョウは種類によって冬の過ごし方がちがいます。アゲハチョウやモンシロチョウは、壁や木などの物陰で、サナギの状態で冬眠します。モンシロチョウは、春から秋に何回か世代交代を繰り返します。世代交代とは、幼虫からサナギになり、2~3週間でチョウになることです。しかし、冬が近づくと成長をやめて、サナギのまま冬眠し、春にやっと成虫のチョウになります。
成長をやめる判断は気温と日光が当たる時間です。東京では、日光が当たる時間が12時間10分よりも短いと、モンシロチョウは冬眠することが多いそうです。茶色いタテハチョウは、成虫の姿で冬眠します。草むらや木のうろなど、雨風が当たらないところでじっとして、春が来るのを待ちます。
ダンゴムシは石の下
ダンゴムシは、外から見えない石の下などでじっとしています。暖かい時には起きて、エサの枯れ葉や落ち葉を食べます。
変温動物(外の温度によって体温が変わる動物)の虫にとって、冬眠から目覚めて活動するのは、エネルギーを使う命がけの行動です。最近は、冬でも暖かい日が続くことがあります。春になったと勘違いして外に出た虫は、気温が再び下がると死んでしまいます。きちんと冬眠できないと、翌年の繁殖行動にも影響して、数が減っていく可能性があります。【野本みどり】
足もとや木々をのぞくと…
ライターの福家多恵子さんが撮影した冬の昆虫です。カラタチの木にはナガサキアゲハのサナギ=写真<上>(しゃしんうえ)=が、糸で体をしばりつけていました。ススキの枯れ草の山にいたダンゴムシの大家族=写真<下>(しゃしんした)。ほとんどは丸まってじっとしています。ワラジムシも交じっています。
福家さんは「写真を撮った時、四方八方から冷たい風が吹き付けて、顔は痛いし、指はかじかんで動かないし、大変でした。ムダに動かず、冬眠という手段を選んだ虫たちは、本当に賢いなあと感心します」。