トレーナーのハンドサインで、さまざまなジャンプを決めるイルカたち=神戸市須磨区で2019年4月11日、長尾真希子撮影
横に大きく、シワが多いイルカの大脳=神戸市須磨区で2019年4月11日、長尾真希子撮影
Q どれくらいの期間でイルカは演技を覚えるのですか?(大阪市、小4男子)
1~2年でデビュー 親のまねする子も
A イルカショーを始めて今年で丸30年を迎える兵庫県の神戸市立須磨海浜水族園。イルカトレーナー歴13年の川中雄基さん(33)と獣医師の毛塚千穂さん(31)に話を聞きました。
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演技といっても、どこまでのレベルを求めるかにもよりますが、須磨海浜水族園の場合、1~2年でショーに出演できる演技ができるようになります。
イルカのトレーニングを始めるには、まず、エサとなる死んだ魚を食べられるようになることと、「笛を吹いたらエサが出る」ということを覚えてもらわないといけません。笛を吹いて、エサを与えるということを繰り返すことで、「笛が鳴ったら、エサがもらえる」ということを理解させていきます。
最初のトレーニングは、すべての基本となる「止まる」ことと「顔を上げる」ことです。それができるようになれば、遊びの一環として、演技を教えていきます。
演技には、野生のイルカがもともと自然界で行っていた動作を利用し、導き出したものもあります。例えば、イルカが遊びでジャンプをし始めたら、笛を吹いてエサを与えることで、ジャンプという行動をたくさん行うようになります。そして最終的には、ハンドサインによってジャンプを行うようトレーニングしていきます。たくさんの演技を覚えたら、いよいよデビューです。
一方、水族園生まれのイルカは、母親イルカの動作をまねすることで、演技を学びます。2年前に同園で生まれたロクマル(オス)は、生後1年半でデビューを果たしました。デビュー当時から、おなかから着水するジャンプや、観客に水しぶきをあびせるスプラッシュジャンプなど約15種類の演技ができました。
イルカにも個体それぞれに個性があり、好奇心旺盛で警戒心が少ない性格は、物覚えが早いと言います。同園一番の優等生イルカのラヴ(メス・推定17歳)は、約50種類の演技ができるそうで、日々できることが増えているそうです。
イルカが賢いのには、脳みその構造にも理由があります。イルカの脳は「大脳」が大きい上に、シワが多いので、高い情報処理能力を持っていると言えます。また、イルカは、水の中で超音波を出して、物との距離を測っているので、聴覚から情報を得る能力にも優れています。【長尾真希子】