生きものたちをユーモアたっぷりに紹介している「ざんねんないきもの事典」(高橋書店)シリーズや「わけあって絶滅しました。」(ダイヤモンド社)が、大ヒットしています。これらの本を書いた図鑑制作者の丸山貴史さんに、図鑑のおもしろさについて聞きました。【上田泰嗣】
Q なぜ動物図鑑を書くようになったのですか。
丸山さん 大学に通いながら、図鑑を作る編集プロダクションでアルバイトをしたのがスタートです。その後、出版社に入り「世界珍獣図鑑」などの編集をしていましたが、独立してからは文章を書いたり、内容をチェックしたりと、図鑑制作全般を行うようになりました。
Q 作品を読むと、丸山さんは進化にこだわりがあるように思いました。
丸山さん 私が生きものについておもしろいと思うのは、まさに進化です。どんな生きものも環境に適応した結果として生き残っている、つまり勝者ですね。なのに「ざんねん」な特徴もある。それは進化が一本道ではない証拠です。たとえばイルカは水中でくらしているけど、エラで呼吸はできません。水面まで上がって鼻で空気を吸わないといけない。だから、ぐっすり眠ることはできないんです。それは「ざんねん」かもしれませんが、イルカの祖先が陸上動物だったなごりですね。魚が陸に上がって両生類になり、哺乳類に進化してから再び海に戻ったので、イルカの呼吸器官は陸上動物のままなんです。
Q 子どもたちにどんなところを読んでほしいですか。
丸山さん 生きものがその姿に進化したことには必ず理由があります。本に理由が書いてなくても、みなさんが推測することは可能です。そのためには、その生きものがどんなところにすんでいて、周りにどんな生きものがいるかといった情報を集める必要があります。考えの道筋が間違っていなければ、それは一つの説として受け入れられるかもしれません。そういったおもしろさが進化にはあります。
Q 今後の予定は。
丸山さん 7月下旬に「わけあって絶滅しました。2」が出る予定です。シマウマのしまが半分だけ消えたクアッガや、海にもぐって草を食べていたウミベナマケモノなどを取り上げています。どんな理由で絶滅したのか興味を持ってもらえたらうれしいです。
プロフィル
1971年生まれ、東京都出身。子どものころから動物が好きで、20代のときにはイスラエルのダチョウ牧場で働きながら砂漠の動物を観察していました。これまでに100冊以上の図鑑に関わってきました。