1969年7月20日(米国時間、日本時間同21日)、ニール・アームストロング船長とエドウィン・オルドリン宇宙飛行士が搭乗したアポロ11号の月着陸船「イーグル」は、月面に着陸し、同船長は人類として初めて月面に降り立った。続いて同飛行士も降り、2人で月面活動に移り、石などの採集、地震計など実験器具の設置を行った。アポロ11号は同16日(米国時間)打ち上げられ、同船長、同飛行士とマイケル・コリンズ飛行士の3人が乗り込んだ。同24日(米国時間)、太平洋上に着水、無事帰還した。月面に降り立ったオルドリン飛行士。船外宇宙服のマスク(日覆い)には月着陸船、写真を撮影するアームストロング船長、テレビカメラなどが映っている=1969年(昭和44年)7月20日(米国時間)、アームストロング船長撮影、NASA提供
19697月20日(米国時間、日本時間同21日)、ニール・アームストロング船長とエドウィン・オルドリン宇宙飛行士が搭乗したアポロ11号の月着陸船「イーグル」は、月面に着陸し、同船長は人類として初めて月面に降り立った。続いて同飛行士も降り、2人で月面活動に移り、石などの採集、地震計など実験器具の設置を行った。アポロ11号は同16日(米国時間)打ち上げられ、同船長、同飛行士とマイケル・コリンズ飛行士の3人が乗り込んだ。同24日(米国時間)、太平洋上に着水、無事帰還した。月着陸船「イーグル」が着陸した周辺の細かく、柔らかな砂の上に残された飛行士たちのクツの跡。オルドリン飛行士のものとみられる
アポロ11号による初の月面着陸を報じた1969年7月22日の毎小
ちょうど50年前の1969年7月20日は人類が初めて、月面に降り立った日です。今では各国が月面探査に乗り出しています。人類はなぜ月を目指すのでしょうか。月面探査の始まりや歩みを探ります。【篠口純子】
初めて月に行ったのは?
アメリカの宇宙船アポロ11号です。1969年7月20日(日本時間21日)、月面に着陸しました。ニール・アームストロング船長(1930~2012年)らが月面を踏み、世界中で大きなニュースとなりました。「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍だ」とアームストロング船長が残した言葉は今も語り継がれています。
アポロ11号が持ち帰った「月の石」は1970年に開かれた大阪万博のアメリカ館に展示され、人気を集めました。72年までに合計12人のアメリカ人宇宙飛行士が月面に降り立ちました。
アメリカとソ連の宇宙競争って?
第二次世界大戦後、アメリカを中心とした資本主義国と、ソビエト連邦(ロシア)を中心とした社会主義国の対立が深まりました。武力を用いなかったことから「冷たい戦争」(冷戦)と呼ばれます。競争の舞台は、経済や外交だけでなく宇宙開発へと移りました。
ソ連は1957年、世界初の人工衛星スプートニク1号を打ち上げました。さらに61年、ソ連のガガーリン少佐が宇宙船ボストーク1号で地球を1周し、人類初の宇宙飛行を達成。ソ連に後れをとったアメリカのケネディ大統領(当時)は「60年代の終わりまでに人類を月面に到達させる」と議会で演説し、アポロ計画を進めました。
なぜ月へ行くの?
アメリカとソ連が国の力を見せつけ合うために宇宙開発を競い、月面探査を急ぎました。同じように近年は、アメリカと中国が月の探査で競い合っています。経済大国に成長した中国は貿易やハイテク分野でアメリカと対立し、「新冷戦」とも呼ばれています。中国はさらに宇宙開発にも力を入れていますが、ミサイルなどの軍事技術と結びつくため、アメリカは警戒しています。トランプ大統領がアルテミス計画を発表したのも、嫦娥計画を進める中国に対抗するためとみられています。
こうした競争の背景には、月の資源への注目が高まっていることもあります。月には水が存在する可能性が指摘されていましたが、2018年に氷の状態で存在することが確認されました。ほかにも希少な鉱物資源があるとされています。将来、火星などへ人を送る際の中継基地としての役割も期待されています。
アポロの後のアメリカの月探査は?
アポロ計画は1972年に終了し、その後、どの国も人を月に送っていません。アメリカのレーガン大統領(当時)は84年、地球を周回する宇宙ステーションの建設に軸足を移し、それが今の国際宇宙ステーション(ISS)につながっています。ISSには日本やロシア、カナダ、ヨーロッパの15か国が参加しました。
アメリカのトランプ大統領は、月の周回軌道にISSに代わる新たな宇宙ステーションを作る「ゲートウエー計画」を立てました。ロシア、ヨーロッパ、カナダ、日本が参加する予定です。さらに2024年までに月面着陸を目指す「アルテミス計画」も発表しました。女性飛行士を初めて月に送る計画です。
アメリカではベンチャー企業による宇宙旅行の計画も始まっています。「スペースX」という会社は23年に月を周回する月旅行を予定しています。実現すれば、人を乗せた宇宙船が月を周回するのはアポロ計画以来となります。
中国もインドも月へ? 日本はどうする?
2007年に日本が月周回衛星「かぐや」の打ち上げに成功してから、各国が再び月の探査を始めました。宇宙開発を急速に発展させている中国は今年1月に月の裏側に世界で初めて探査機「嫦娥4号」を着陸させました。中国の「嫦娥計画」は、(1)探査(2)有人着陸(3)月面ステーション建設による滞在--の3段階を予定しています。インドも08年に月探査機の打ち上げに成功し、22年までに有人宇宙飛行を目指しています。
日本は月面にピンポイント着陸する小型月着陸実証機(SLIM)の打ち上げを21年度に計画しています。小惑星リュウグウ着陸に成功した探査機「はやぶさ2」の技術が、大きな後押しになりそうです。
月
地球の周りを回る唯一の衛星で、地球にもっとも近い天体。大気はありません。
地球からの距離 約38万キロメートル
直径 約3476キロメートル(地球の約4分の1)
重力 地球の約6分の1
温度 昼は110度、夜はマイナス170度
おもな宇宙開発の歩み
1957年 ソ連が人類初の人工衛星「スプートニク1号」を打ち上げ
61年 ソ連がガガーリン少佐を乗せた人類初の有人宇宙船「ボストーク1号」を打ち上げ
69年 アメリカがアポロ11号で人類初の月面着陸に成功
70年 日本初の人工衛星「おおすみ」打ち上げ。中国初の人工衛星打ち上げ
71年 ソ連が世界初の宇宙ステーション「サリュート1号」打ち上げ
81年 アメリカのスペースシャトル初飛行
90年 秋山豊寛さんが日本人初の宇宙飛行
98年 国際宇宙ステーション(ISS)=写真<1>=建設開始
2003年 中国が「神舟5号」で有人飛行に成功
07年 日本の月周回衛星「かぐや」=写真<2>、中国の無人月探査機「嫦娥1号」打ち上げ
08年 インドが無人月探査機「チャンドラヤーン1号」打ち上げ
19年 中国が「嫦娥4号」で月の裏側に着陸成功
22年前後 中国の宇宙ステーション完成?
24年ごろ アメリカが有人月面着陸を実施?
26年ごろ 月近傍有人拠点「ゲートウエー」=写真<3>=が完成?