2020年東京オリンピック(五輪)のマラソン代表を決める大会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」が15日、東京都内で開かれます。有力選手が一堂に会し、代表の座をかけて東京五輪とほぼ同じコースを走ります。大会を前に注目選手やコースを紹介します。【篠口純子】
MGCって初めてなの?
五輪のマラソン選手を選ぶのに、一発勝負のレースを取り入れたのは今回が初めてです。これまでの日本代表は、五輪前年度の世界選手権などいくつかの主要レースの成績を参考に、日本陸上競技連盟が選んできました。しかし、こうして選ばれた選手の中には、1回しかない本番に向けた心と体の調整がうまくできないケースもありました。そこで、日本陸上競技連盟はMGCを導入したのです。
一発勝負といっても、MGCに出場するには予選を勝ち抜く必要があり、実際には2段階方式です。(1)「MGCシリーズ」と呼ばれる、2017年夏から19年春までの国内主要大会(男子5大会、女子4大会)(2)「ワイルドカード」と呼ばれる国際陸上競技連盟が公認する競技会――のいずれかで、定められた順位とタイムの条件を満たすことでMGCの出場資格が得られます。
コースは?
新国立競技場が五輪に向けて建設中のため、ほど近い明治神宮外苑いちょう並木が発着点です。それ以外は東京五輪とほぼ同じ42・195キロメートルで、男子は午前8時50分、女子は午前9時10分スタートです。
真夏に開催する東京五輪を想定し、残暑の厳しい9月の開催としました。日本陸上競技連盟は「模擬五輪」と位置づけていて、五輪と同じくペースメーカーはおきません。ペースメーカーは、優れた記録が出るよう先頭を走ってレースをリードする人です。
勝負のポイントは、37キロメートル付近の四谷です。高低差30メートル超を駆け上がる上り坂が待ち構えます。勝負どころまで余力を残せるよう、いかにペース配分ができるか。坂の攻略だけではなく、レース中盤や上りに入る前にスパートをかけるなど戦略も問われます。
日本はメダルを獲得したことがあるの?
マラソンは五輪の花形種目です。日本が初めて五輪に参加した1912年ストックホルム大会には、金栗四三さんが出場しました。初めてのメダル獲得は36年ベルリン大会の孫基禎さんの金と、南昇竜さんの銅ですが、2人は日本の植民地だった時代の朝鮮で生まれ、日本代表として五輪に出場しました。
女子では、小出義雄監督(2019年4月死去)が育てた有森裕子さん、高橋尚子さんがメダルを獲得。しかし、04年アテネ大会の野口みずきさんの金メダルを最後に、男女とも表彰台から遠ざかっています。
注目の選手は?
男子31人、女子12人が出場します。代表争いは、男子が2時間5分50秒の日本記録を昨年マークした大迫傑選手(28)、前の日本記録保持者の設楽悠太選手(27)、高温多湿だった昨年のジャカルタ・アジア大会で金メダルを獲得した井上大仁選手(26)、昨年の福岡国際で日本選手14年ぶりの優勝を果たした服部勇馬選手(25)の「4強」を軸とした展開となりそうです。
一方、女子は17年世界選手権長距離代表の鈴木亜由子選手(27)と松田瑞生選手(24)、世界大会の経験が豊富な37歳の福士加代子選手、名門・天満屋のホープである前田穂南選手(23)らが中心ですが、各選手の実力は互角といえます。
日本代表の選び方は?
五輪代表枠は男女各3人です。MGCの1位と2位が代表に内定します。この2人はMGC直後の25日から1週間、五輪に向けた戦略を話し合う「キックオフ合宿」を予定しています。その後も十分な準備期間を活用して、本番に臨みます。
残る1人は、19年冬から20年春に実施される国内大会(男女各3大会)で、設定タイムをクリアした中で最速だった選手が選ばれます。設定タイムは、男子が日本記録相当の「2時間5分49秒」、女子は日本歴代9位相当の「2時間22分22秒」です。突破者がいない場合は、MGCの3位が代表となります。<え・内山大助>
日本代表の歴代メダリスト
★印はオリンピック新記録
年 大会名 選手名 メダルと記録
1936年 ベルリン 孫基禎 金メダル(2時間29分19秒2★)
南昇竜 銅メダル(2時間31分42秒0)
64年 東京 円谷幸吉 銅メダル(2時間16分22秒8)
68年 メキシコシティー 君原健二 銀メダル(2時間23分31秒0)
92年 バルセロナ 森下広一 銀メダル(2時間13分45秒)
有森裕子 銀メダル(2時間32分49秒)
96年 アトランタ 有森裕子 銅メダル(2時間28分39秒)
2000年 シドニー 高橋尚子 金メダル(2時間23分14秒★)
04年 アテネ 野口みずき 金メダル(2時間26分20秒)