Q 景気をよくするために、お金をいっぱい作ってはいけないのですか。
景気アップ通り越し、お金が役立たずに
A ある日、みんなのお財布に入っているお金が増えたらどうなるでしょう。
欲しかったおもちゃを買いに行ったりしてみんながお金を使い、お店や会社は商品が売れて繁盛します。たくさん作るために材料を仕入れたり、働く人を雇ったり、工場を建てたりします。お店や会社がもうかって働く人の給料も上がれば、みんながもっとお金を使って暮らしを豊かにしようとします。
景気が悪いのはその反対です。みんながあまりモノを買わず、必要になる時のためにとっておきます。モノが売れなければお店や会社はもうからず、つぶれてしまいます。仕事がなくなる人も出てきます。みんなのお財布のお金が減り、将来を不安に思ってお金をもっと使わなくなります。
ですから、「お金をいっぱい作ったら、景気がよくなる」と考えるのはその通りです。
それなら、国がお金をどんどん作ればいいのでしょうか。最初のうちは景気がよくなるでしょう。そのうち、人々が欲しいモノを手にいれようとすることに、売る方が追いつかなくなります。そうするとモノの値段が上がるインフレーション(インフレ)が起こります。大事にとっておいたお年玉でおもちゃを買おうとしても、値上がりしていて足りないかもしれません。
値段が少しずつ上がって、給料もおこづかいも増えるなら「お金はためるより使った方がいい」となってさらに景気がよくなりますが、それで済むとは限りません。「お金を持っていても何も買えなくなってしまう」と人々が思い始めたら、お金を手放して、価値が変わりそうにない別の国のお金や金などのモノに替えようとします。こうして、みんながお金を信じなくなると、国が作ったお金は役に立たなくなり、大混乱になります。
「そうなる前に、景気が少しよくなったらお金を作るのをやめればいい」と思うかもしれません。でも、歴史を振り返るとそれが難しいことがわかります。そのため、お札を発行するのは政府とは別の日本銀行で、政府が日本銀行を使ってお金をばらまくことも禁止されています。
最近、日本やアメリカで話題になっているお金の考え方に「MMT」(現代貨幣理論)があります。「お金を作れる国は、税金や借金でお金を用意する必要はない。仕事がなくて困っている人がいなくなるまで、国がお金を作って使えばいい」という考え方です。
支持する人は、モノの値段が急に上がり始めないうちは問題ないと言います。ですが、批判する意見も多く、お金作りをちょうどいいところで止めることは難しいと言っています。【黒崎亜弓】