小型ロボ「ミネルバⅡ-2」投下
探査機「はやぶさ2」のチームはさる10月3日、小惑星リュウグウの上空1キロまで降下・接近し、表面に向け小型ロボット「ミネルバⅡ-2」を放出しました(写真1)。
この日午前1時ごろ「はやぶさ2」本体から分離、落下を始めた「ミネルバⅡ-2」は、東北大学や山形大学など国内の5大学のグループが開発したもので、長さがおよそ15センチ、重さが900グラム程度の小さなロボット(写真2)。昨年9月にリュウグウに着陸し画像撮影などを行った3台のロボット(ミネルバⅡ-1A、ミネルバⅡ-1B、マスコット)と同じように、本来はぴょんぴょんと表面を跳びはねながら移動するタイプのものでした。しかし「ミネルバⅡ-2」には、機器が動かないという原因不明のトラブルが起き、この時は観測に参加できなかったのです。
そこで、このたび計画を変更し、高度1キロあたりで「はやぶさ2」から分離し、リュウグウの周りをゆっくりと8周しながら落下するその様子を「はやぶさ2」から観察することによって、いびつな形をしているリュウグウの重力を測定するミッションに切り替えました。ミネルバⅡ-2は表面に落ちるまで5日くらいかかります。その様子を観測して、「はやぶさ2」の小惑星での仕事は全て終わります。「はやぶさ2」チームは、「ロボットにトラブルがある中で、いまできる最善の運用を行ったうえで、地球への帰還に向けた準備を始めたい」と話しています。
なお、「はやぶさ2」から投下したドイツ・フランス共同開発の小型ローバー(探査ロボット)「マスコット」の観測結果によれば、リュウグウの地表には、明るく映っている白っぽい鉱物と黒っぽい鉱物が分布していて、その両方がほぼ半分ずつある珍しい岩の塊も見つかったそうです(写真3)。一つの岩の塊に2種類の対照的な鉱物が見つかるのは珍しいですね。リュウグウは元の天体が一度壊れ再び集まってできたとみられていて、見つかった岩の塊は元の天体でできた可能性があるということです。
それにしても、リュウグウになる前の天体内部の温度や圧力などはたびたび変わった可能性があるとすれば、「はやぶさ2」が地球に持ち帰る岩石の分析結果がますます楽しみになってきました。
的川泰宣さん
長らく日本の宇宙開発の最前線で活躍してきた「宇宙博士」。現在は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の名誉教授。1942年生まれ。
日本宇宙少年団(YAC)
年齢・性別問わず、宇宙に興味があればだれでも団員になれます。 http://www.yac−j.or.jp
「的川博士の銀河教室」は、宇宙開発の歴史や宇宙に関する最新ニュースについて、的川泰宣さんが解説するコーナー。毎日小学生新聞で2008年10月から連載開始。カットのイラストは漫画家の松本零士さん。