警報208条について解説したページ=「こども六法」から
むずかしい法律の言葉をやさしく解説した「こども六法」(弘文堂、1320円)が、話題になっています。本を書いた教育学者の山崎聡一郎さん(25)=東京都=は、小学校時代にいじめられた経験があります。いじめや虐待の問題を解決するために、法律の知識が役に立つという思いを込めました。【田嶋夏希】
山崎さんは小学5~6年生の時、いじめ被害にあっていた同級生をかばったことをきっかけに、いじめられるようになりました。社会の授業で、人権を守ることを定めている日本国憲法を習い、「いじめは人権侵害になるはずなのに、どうして止めてもらえないんだろう」と疑問に思ったそうです。
中学生になると、学校の図書館で、憲法をはじめとした基本的な法律「六法」などを収める「六法全書」を見つけました。いじめで侵害された自分の人権をどう救ってもらえるのか、いじめを止める仕組みがないのかについて調べ始めました。
慶応義塾大学に進み、「こども六法」の編集を思いつき、本にまとめました。一橋大学大学院生となり、さらに内容を充実させ、昨年からはインターネットで応援してくれる人からお金を集める「クラウドファンディング」という手法で出版化を進めました。これが出版社の目にとまり、市販化にこぎ着けました。
山崎さんが分かりやすさにこだわったのは、法律を知ることが、いじめや虐待の被害にあう子どもたちの力になると考えるからです。「法律には何が犯罪で、どういう罰則があるかが書いてあります。『いじめられている自分が悪いわけではない』と分かってほしい」と言います。
例えば、刑法208条には「暴行」という罪があります。「こども六法」は「人に乱暴な行いをしたけれども、相手にケガをさせなかった場合」と書いています。イラストをそえ、「石を投げたり、水をかけたりするだけでも暴行だよ」と補います。
山崎さんが読者の子どもたちに期待しているのは、どんな法律があるのかを頭に入れ、必要になった時に調べられるようになることです。全国の学校の教室に1冊置かれることを目指しています。