耳の聞こえない、ろう者の映画監督、今井ミカさん(30)の作品「虹色の朝が来るまで」が今月から、東京、大阪などで劇場公開されます。テーマは、ろう者の中にもいるLGBTなど性的少数者です。難しいテーマですが、やさしく描かれています。【上田泰嗣】
Q この作品はどういう映画ですか。
今井さん 女性同士で好きになった、ろう者の若い女性が主人公です。信頼していた母親が許してくれず悩むのですが、同じような性的少数者の人たちと出会って、打ちとけていきます。ろう者にとっては手話が言語で、日本語は第二言語なのでセリフは手話中心で描きました。音響や日本語字幕もあり、聴者(ふつうに耳の聞こえる人)にも見てほしいです。
Q なぜこのテーマを選んだのですか。
今井さん 私自身、子どものころから女性を好きになることがあり、いけないことなのだと思ってつらい気持ちをかかえていました。ろう者の社会は狭く、性的少数者への理解も進んでいません。多様性を認め、ありのままの自分でいい社会になってほしいという願いがあります。
Q 好きな映画監督はだれですか。
今井さん 是枝裕和さんに影響を受けました。特に時間の流れなどの表現が特徴的な「海街diary( ダイアリー )」が好きです。出演者の真正面からカメラを向ける小津安二郎さんの撮り方も好きです。
Q どんな小学生でしたか。
今井さん 絵を描いたり、工作をしたりすることが好きでした。街をつくりたくて、家の模型を並べ、指人形を置いて想像の世界を楽しんでいました。なんだか映画作りに通じるものがありますね。
Q 小学生にメッセージをお願いします。
今井さん 私が小学生だったころは、口の動きを読み取る口話が中心で、学校で手話は禁止されていました。家族との会話は手話なのに学校では使えないというギャップがありました。今の小学生には、他人と違うことをおそれず、自信を持ってほしいです。
Q これから、どんな映画を撮りたいですか。
今井さん 社会問題にこだわらず、面白いものを作りたいです。サスペンス、SFなど、いろいろな方向に興味があります。ろう者が社会的地位を得るような、例えば会社の社長になるなどのストーリーもいいですね。
プロフィル
1988年生まれ、群馬県出身。小学6年生の時、「手話で楽しめる映画がないなら自分で作ろう」とビデオカメラを構えました。手話、ろう文化を中心とした映像制作のプロデュースを行っています。