Q コアラはなぜ毒のあるユーカリの葉を食べられるのですか(東京都、小2、女子)
毒こわす、強い肝臓 母ゆずりの微生物
A まず、ユーカリの毒はどれほど危険なのでしょうか。北里大学獣医学部助教の小倉匡俊さんに聞きました。ユーカリはオーストラリアなどに生えている木で、コアラが葉を食べることでも知られています。その葉には毒になる青酸化合物などがふくまれています。人間なら、たくさん食べればおなかが痛くなる、という程度です。葉を食べたらすぐ死んでしまうというほど危険ではないそうです。
多摩動物公園のお母さんのニーナ(左上)とニシチ=6日、同園提供
とはいっても、体に悪いので普通の動物は食べません。では、コアラはなぜ大丈夫なのでしょうか。日本で初めてコアラを飼育した多摩動物公園(東京都)よると、コアラの肝臓は、ユーカリの毒をこわす強い力があるとみられています。肝臓は食べ物の消化を助けたり、毒を消したりする役割を持っている体の器官です。コアラの肝臓は、とくにユーカリの毒に強いそうです。
また、コアラは盲腸という器官に、硬いユーカリの葉の消化を助けてくれる微生物(菌などの小さな生き物)を持っています。コアラの赤ちゃんは離乳食として、お母さんの盲腸でできたやわらかいフンを食べ、微生物をもらいます。微生物は毒をなくす助けをしているとも考えられています。
ユーカリは600種類以上あるといわれています。そのうちコアラが食べるとわかっているのは30種類ほどです。それぞれのコアラで好みがちがい、中には数種類のユーカリしか食べないコアラもいます。
多摩動物公園では今年2月7日、8年ぶりにコアラの赤ちゃんが生まれました。同園で生まれた赤ちゃんは15頭目です。お母さんはニーナ、お父さんはコタロウです。赤ちゃんはオスで、ニシチと呼ばれています。誕生日の数字の「2」と「7」にちなみます。
生まれたばかりの赤ちゃんの体長は約2センチメートル、体重は約0・5グラムです。有袋類のコアラは半年ぐらい、お母さんの袋の中で赤ちゃんを育てます。9か月以上たった今、ニシチは完全に袋から出て、ユーカリに手をのばすなどしていますが、むしゃむしゃ食べられるほど大きくなってはいません。1歳ぐらいでお乳を飲まなくなるまでに、しっかりユーカリを食べられるようになります。【上田泰嗣】