世田谷区の新しい母子手帳を手にする坂口くり果さん=東京都世田谷区で
世田谷区の新しい母子手帳。1ページ分を使って、子どもの権利条約を掲載しています
東京都世田谷区は4月から、母子健康手帳(母子手帳)に「子どもの権利条約」を載せています。白百合学園中1年の坂口くり果さん(13)が、小学6年の時に提案して掲載が実現しました。条約について学びを深める中、お母さんの愛情がこもった母子手帳からアイデアを得ました。
坂口さんは小学4年の時、「チャレンジ!キッズスピーチ」という本と出合いました。世界中の子どもたちが社会問題を訴えるスピーチに感動し、本を編集した団体「フリー・ザ・チルドレン・ジャパン」(FTCJ)に入りました。FTCJのキャンプに参加し、いろいろな年代の子どもたちと話し合いました。その中で児童労働や子どもの貧困、子どもの権利条約のことを知りました。
日本は豊かな国で、70年以上にわたり戦争もしていません。しかし、児童虐待、いじめなど、いろいろな問題があります。「『戦争がない』イコール『平和』というイメージがありましたが、そうではないことに気づきました」
母の愛を知る 坂口さんは小学5年の秋、インフルエンザの予防接種を受けに行った病院の待合室で母子手帳を見ました。お母さんが自分の生まれる前から成長の記録をつけていたことを知り、「うれしかった」と深い愛情を感じました。
「子どもの権利条約を母子手帳に載せれば、きっとみんなが見てくれる」と思いつき、行動を起こしました。よく見ると、お母さんの母子手帳には最後のページに小さな文字で「子どもの権利条約」が載っていました。さらに調べてみると、2011年度から載せていないことが分かりました。
小学6年の夏、自分が住む世田谷区の保坂展人区長に会い、「もう一度載せてほしい」とお願いしました。保坂区長は賛同し、区議会で取り上げられました。
新しくなった母子手帳では、最後の1ページ分を子どもの権利条約だけに使っています。生きる権利▽育つ権利▽守られる権利▽参加する権利――の四つの柱を中心に、イラストと分かりやすい文章で紹介しています。坂口さんは「みんなが子どもの権利条約を知っていることが当たり前の社会になってほしい」と願っています。【篠口純子】