はやりの物がなぜはやっているのか?(東京都文京区、小3)
◆ツチヤさん
周りと同じを好む?
「はやり(流行)は作られている」って言われることがある。たとえば、流行色は「国際流行色委員会」が世界規模で決めているらしい。この団体が「次の流行色はこの色でどうですか?」と提案すると、各国の人たちはその情報に基づいて、次に流行しそうな服の色やデザインを予想して発表する。すると今度は、ファッションデザイナーたちがそれに基づいて次々と新しい洋服を作っていって、実際にブームになるのだそうだ。
でも、この話が本当だとしても、それは今回の疑問の答えにはあまりならない。だって、仮にファッション業界の人たちがはやらせるために似た服をたくさん作ったとしても、そんなの無視して自分が着たい服を着ればいいからだ。
しかし人間には、周りの人の多くが同じものを持っていると、自分もそれを欲しくなる習性があるらしい。だから流行が生じるんだけど、そもそもなぜ僕たちはそんなふうに思ってしまうんだろう?
◆コーノさん
伝統との違い考える
人は自分であまり意識しないで、人のまねをしてしまうものらしい。流行は、いま、多くの人がやっているから、自分もそれをすることだね。
でも、昔からこうしていた、というので、その通りに自分もまねをすることもあるよね。たとえば、あいさつの仕方で、おじぎをして、ちょっとニコッとして「こんにちは」とか言う。これは、日本ではとても多くの人がやっているけど、流行とは言わないね。こういうのを伝統という。伝統は昔のやり方のまねだね。
流行という現象が始まったのは、多くの人が集まる大きな都市ができてからと考えられるね。流行は、たとえば、服装にしても、これまでとは違うものにするのだから、伝統とは異なったものになる。
だから流行は、大きな街ができて、これまでとは違う考え方や生き方をしたいと思う人が集まるときに生まれるんじゃないかな。年寄りよりも、自分たちの同世代を大切にしたいという気持ちの表れかもね。
◆ゴードさん
まねて上達は賢い方法
昔からの仕方のまねからは伝統が、新しい仕方のまねからは流行が生まれる。反対なのにどちらもまね! おもしろいね。
「人まね」というとかなりかっこ悪いイメージだ。自分で考えずに、誰かのやり方をそのままいただくのは、ずるい感じがする。友達やきょうだいに自分のまねばかりされると嫌だよね。「とりあえず前と同じにしておけば文句を言われないでしょう」という人や、「これも持っていないなんて時代に遅れてるよ」とまねしない生き方をバカにする人も、相当ダサい。
だけど「伝統を受け継ぐ」とか「時代の波に乗る」なんて言うと、同じまねでもかっこいい。それに、勉強もスポーツも芸術も、最初の上達が速いのは、まねがうまい人だ。つまり、うまいやり方をまねるのは、とても賢い方法でもある。
流行って、かっこいいまねとかっこ悪いまねの両方からできている感じがする。どうせなら、かっこいいまねがいいなあ。<イラスト・熊谷理沙>
◆哲学カフェは、一つだけの正解がない問いを語り合う哲学対話です。
■ツチヤさん…土屋陽介
確かなものは何もないと思ったのが、哲学との出会い。学校で哲学対話をする落語好き。開智日本橋学園中教諭
■コーノさん…河野哲也
心とからだの関係に関心がある。子どもと哲学の話し合(はな あ)いをするのが好き。イヌと走るのが趣味。立教大教授
■ゴードさん…神戸和佳子
なぜ生きるのか考えていたら、哲学者に。口癖は「そもそも」。公立・私立の中学高校で非常勤講師
■ムラセさん…村瀬智之
考える事が好きで哲学を学んだ。賢い人はどんな人かを考え中。ラジオを愛する30代。東京高専准教授
■マツカワさん…松川絵里
科学と社会の関係に関心がある。小食なのに食いしん坊。哲学対話を開催する団体「カフェフィロ」副代表
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