田中泰義 毎日新聞 くらし医療部長
新型のコロナウイルスに感染し、熱やせき、肺炎などの症状を持った人が増えています。毎小読者のみなさんは、手洗いやうがい、マスクの装着を心がけたり、人の多い場所にあまり行かないようにしたりと、感染しにくい生活を過ごしましょう。
ウイルスとは、私たち動物や植物という別の生き物を利用して、子孫を増やす最小単位の生き物です。丸かったり、ひも状だったりと、形はとても個性的です。大きさは1万分の1ミリメートル以下。小学校の理科室にある光学顕微鏡で見ることはできません。電子顕微鏡という性能の高い道具でようやく観察できます。
コロナウイルスのコロナには、ラテン語で「王冠」という意味があります。ウイルスの形が王冠に似ていたのでこんな名前になったそうです。みなさんがコロナという単語を耳にしたのは、天文学の分野かもしれませんね。太陽が月に覆われてすっぽり隠れる「皆既日食」のときに現れる美しい太陽の大気層もこう呼びます。あわせて調べてみましょう。
さて、今回のコロナウイルスに感染しても、大半の人で症状は軽いようです。しかし、その特徴がかえって感染を拡大させる理由になっています。というのは、ひどく体調を崩せば寝込んでしまいますが、軽症ならば外出できるので、周りの人に感染させてしまうのです。症状をやわらげることが中心で特効薬はありませんが、私たちの体には、ウイルスなどの敵を退治する「免疫」という機能が備わっています。今回も健康な人ならば、さほど心配する必要はありません。
ウイルスが原因となる病気には、はしかやインフルエンザ、一部のがんなどたくさんあります。人類は免疫に頼るだけでなく、感染を予防するためのワクチンや治療薬を開発してきました。しかし、これからも新たなウイルスが現れるでしょう。人類の歴史は、ウイルスという見えない敵との戦いの歴史でもあるのです。
医学や地球温暖化、原発などを担当。学生時代はオーロラを専攻した理系人間。本物が見たくて休職し、アメリカのアラスカ大学に留学。40代でバイオリンを始めた。1966年岐阜市生まれ。