2012年8月7日、イギリスで開かれたロンドン・オリンピック(五輪)女子卓球団体決勝。日本チームは中国に敗れましたが、日本卓球史上初の五輪メダルとなる銀メダルを獲得しました。その3選手の中に福原愛さんの姿がありました。「泣き虫愛ちゃん」が、五輪メダリストになった瞬間でした。
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福原さんは3歳からラケットをにぎり、母親と猛特訓を続けていました。卓球台に背が届かないほど小さな体でも、放つスマッシュは大人顔負け。その一方で、試合に負けると泣きじゃくる。そんな天才少女の姿はテレビで取り上げられ、だれもが知る人気者となりました。
プレースタイルは、卓球台の近くに立って、速いテンポで次々と攻撃をくり出す「前陣速攻型」です。エースとして臨んだロンドン五輪で銀メダルを手にします。「メダルを取るのに20年かかったが、夢はかなった」。2016年リオデジャネイロ五輪の女子団体でも、銅メダルを獲得しました。
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幼いころ、母親と繰り返した「1000本ラリー」。失敗したら一からやり直しの厳しいものでしたが、福原さんの「ミスが少ない卓球」の原点となりました。また、幼い時から適切な指導が必要だと、卓球関係者に気づかせるきっかけにもなりました。
いま活躍している石川佳純選手や伊藤美誠選手は、福原さんにあこがれて腕をみがいた世代です。福原さんの存在が、日本卓球界の躍進につながっています。【まとめ・武本亮子】
◆忍法帳
人気者の「愛醬」
福原さんは小学校入学前から中国人コーチの指導を受け、16歳で中国東北部のチームに入って各地を転戦。自然と覚えたという中国語は発音が美しく、中国や台湾でも人気者に。日本語の「あいちゃん」の発音に近い「愛醬」などの愛称で呼ばれました。リオ五輪後、台湾の卓球選手、江宏傑さんと結婚しました。
プロフィル
1988年生まれ、宮城県出身。五輪には2004年のアテネ大会から4大会連続で出場。08年の北京大会では日本選手団の旗手を務めました。団体では12年のロンドン五輪で銀メダル、リオデジャネイロ五輪で銅メダル。12、13年全日本選手権シングルス優勝。18年に引退を表明。身長156センチメートル。