首と舌をグーンと伸ばし、葉を食べるキリン=休園中の大阪・天王寺動物園で4月23日
先週に続き、静岡県の福祉施設で支援員をしている福島遥さん(24)の手紙を紹介します。
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福島さんが働いているのは、障害を持つ小・中学生、高校生が放課後を過ごす施設です。体が動かせない子や、体は動かせるけれども人と会話ができなかったり、言葉を理解するのが難しかったりする子がいます。
「施設に通ってくる子どもの多くはマスクが苦手です」「障害のある子がいる家族にとって、今回の休校措置は、健常の子どものお宅より、ずっとずっと大変な問題でした」と書いていました。
詳しく聞きたくて、電話をしてみました。福島さんはとてもやさしい、あたたかい声の持ち主でした。
「動くのも難しいような障害があるお子さんは、あごの力も弱くて、よだれが出ることが多いんです。そうするとマスクがぬれてしまって、つけているとすごく不快なのだと思います」「また、発達障害の子(脳の発達が特別な子)の中には、触覚過敏の子もいて、マスクをつけるのがつらいようです」と、教えてくれました。
触覚過敏とは、かすかに体に触られても、痛いと感じてしまうなどの感覚の異常です。感じ方の強さは人それぞれですが、例えばちょっとチクチクするセーターが、針のように痛くて着られない場合もあるそうです。私は全然知りませんでした。
そもそも言葉を理解するのも難しい子には、新型コロナウイルスのことも、なぜマスクをつけないといけないかも分かりません。だから外に出た時、マスクをとってしまったりするのです。
マスクなしの人を見かけたらつい「ダメだよ」と怒ってしまいそうですが、いろんな事情の人がいるんですね。
福島さんは、マスクができない子と散歩した時などに、冷ややかな視線を感じたことがあるそうです。「親御さんやきょうだいなど家族にとっては、いつしかられるかとハラハラの連続だと思います」
みなさんも、新型コロナウイルスのためにさまざまなこと--例えば、学校や習い事にいけなくなったり、お母さんやお父さんがすごく忙しくなってしまったりなど--に耐えているはずです。それと同じように、障害を持つ子どもたちも、その家族も、それを支える人たちもいろいろなものに耐えています。
そのことを忘れないでいたいな、と思います。
新型コロナに立ち向かい、「がんばっている障害者や福祉施設の職員がいることをしっかり伝えたかった」と福島さん。なんだかこちらが励まされました。お手紙、本当にありがとうございました。【編集長・太田阿利佐】