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毎小編集長の太田阿利佐が執筆するコラムです。読者や保護者と一緒にお茶をいただいているつもりで、おしゃべりします。

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「鬼滅の刃」が完結 人気には理由がある

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たくさんの朱色の鳥居が建ち並び、幻想的な雰囲気が人気の伏見稲荷神社=京都市伏見区で
たくさんの朱色の鳥居が建ち並び、幻想的な雰囲気が人気の伏見稲荷神社=京都市伏見区で

 マンガの「鬼滅きめつやいば」がわったことがニュースになっていました。大人気だいにんきで、最新刊さいしんかん20かんまでの発行部数はっこうぶすう合計ごうけいでなんと6000まんにもなるそうです。じつは、編集長へんしゅうちょうんでいました。「なかまあつまれ」の投稿とうこうでもよくてきたので、すごくになっていたのです。

   ◇◆  ◆◇

 マンガの舞台ぶたい大正時代たいしょうじだい(1912~26ねん)のはじめ。主人公しゅじんこうしょうねんたん治郎じろう家族かぞくは「おに」にころされ、不思議ふしぎなことにいもうとも「おに」になってしまいます。たん治郎じろうおに退治たいじしながら、いもうと人間にんげんもど方法ほうほうさがすという物語ものがたりです。

 たたかいの場面ばめんこわくて、わたしはあまりきではありません。でもたん治郎じろう仲間なかま--臆病者おくびょうものおんなよわぜんいっや、やたら猪突猛進ちょとつもうしんする伊之助いのすけ--のてくるシーンは大好だいすき。たたかいにかう伊之助いのすけが「はらるぜ!」とさけび、ぜんいっが「うでるだろ」とうところなど、大笑おおわらいしてしまいました。

 たん治郎じろうがただてきをやっつけるのではなく、「きでおにになったんじゃないかも」と、あわれにおもうところも印象いんしょうてきでした。たん治郎じろうてき立場たちばって、想像そうぞうするちからがあるんですね。

 んでいて、馬場ばばあきさんがいた「おに研究けんきゅう」というほんおもしました。

 馬場ばばさんは和歌わかをつくる歌人かじんです。古典こてん文学ぶんがくをたくさんみ、おにつよくておそろしいのにつねに「ほろびるがわ」だとづきます。そしておにとはなにかを研究けんきゅうしたのです。夜中よなか都大路みやこおおじあるまわ百鬼夜行ひゃっきやこうや、そらぶテング……おにたちはどこからたのか、と。もちろんおに本当ほんとうはいません。だからこれは「おに想像そうぞうしたむかしひとこころ」の研究けんきゅうです。

 このほんによると、奈良時代ならじだい平安時代へいあんじだいおには、天皇てんのう貴族きぞくなどの権力けんりょく抵抗ていこうし、反逆はんぎゃくする存在そんざいでした。ひどいにあわされても抵抗ていこうできないよわ立場たちばものが、おにになってつよものふくしゅうする。だからおんなひともよくおにになりました。おにる、というはなしは、権力けんりょくものへの警告けいこくでした。

 江戸時代えどじだいになると幕府ばくふちから集中しゅうちゅうし、反逆者はんぎゃくしゃ、つまりおにあらわれなくなると馬場ばばさんはきます。幕府ばくふが「権力けんりょくおに」になり、わりに幽霊ゆうれい登場とうじょうします。「おにひとおそったりするけれど、幽霊ゆうれいなにもしない。やなぎしたにぼーっとっている。でも、ることによって相手あいて良心りょうしんうったえたのね」。以前いぜん取材しゅざいしたとき馬場ばばさんはそう説明せつめいしてくれました。良心りょうしんがあるからこそ幽霊ゆうれいこわいんですね。

 どんな時代じだい、どんな社会しゃかいでも、たくさんのひときつける物語ものがたりには、かならずその理由りゆうがあります。「鬼滅きめつやいば」がおおくのどもたち--つまりみなさん--のこころをとらえる理由りゆうはなんでしょうか。

 人気にんきほんなおし、その魅力みりょくをじっくりかんがえたり、ともだちとはなったりしてみてはどうでしょう。そこから「時代じだい」がえてくるかもしれません。【編集長へんしゅうちょう太田阿利佐おおたありさ

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