Q ジンベエザメは、プランクトンだけでなんであんなに大きくなるの?(大阪市、小3、男子)
豪快に口を開けてエサを食べるジンベエザメ=海遊館提供
追いかけなくても大量に食べられる
A 2頭のジンベエザメを飼育している「海遊館」(大阪市)の魚類担当飼育員、喜屋武樹さん(27)に教えてもらいました。
ジンベエザメは、世界中の温かい海に生息し、最長で10メートル以上に成長する世界最大の魚類です。体の背面のまだら模様が、甚兵衛羽織に似ていることから、この名前がついたと言われています。
サメと聞くと、凶暴なイメージがありますが、ジンベエザメはとてもおとなしい魚で、主に甲殻類などのプランクトンを食べて生息しています。そのため、歯は退化していて、爪ようじの先のような、とても小さな歯が口の上下あわせて約8000本並んでいます。
自然界には多くのプランクトンがいて、生態系を支えています。野生のジンベエザメは毎日、大量のプランクトンを食べていますが、海に漂うプランクトンは魚に比べて頑張って追いかけなくても食べることができます。
生き物たちは、長い年月をかけて、その環境に適応し、進化してきました。ジンベエザメもその一つと思われます。環境に適応していく中で、あまり動かずに効率よく、たくさんのエサを食べるうちに大きくなったと考えられます。ちなみに世界一大きな生き物であるシロナガスクジラもプランクトンを食べています。
海遊館では、ジンベエザメにオキアミやイサザアミなど小型の甲殻類のプランクトンを1日2回、計約6~8キログラム与えています。エサの中にごみが混ざっていないか、飼育員がチェックし、ジンベエザメの大きさなどに合わせて、配分を変えたり、人工飼料やサプリメントを与えたりしています。エサとなるプランクトンは、鮮魚や水産物の加工・販売を行っている業者から購入しています。
ジンベエザメのエサの食べ方は豪快です。飼育員が水面をひしゃくでたたいて呼ぶと、口を大きく開けて、掃除機のように大量の海水と一緒にエサを吸い込むのです。海水でおなかがいっぱいになりそうですが、エラの奥にある鰓耙というスポンジのような部分でエサだけをこしとって食べています。大口を開けてエサを食べているうちに、立ち泳ぎになる光景は、海遊館の見どころの一つです。
この立ち泳ぎは、自然界でも見られるようです。プランクトンは水面に集まるからだと思われます。野生のジンベエザメは、多くのことがいまだに謎に包まれています。海遊館では、一定の大きさに成長したジンベエザメや網にかかった野生のジンベエザメに小型の発信器を装着し、海へ帰し、回遊する経路を調査しています。飼育しているジンベエザメと野生のジンベエザメの両方を研究することで保全に貢献したいと考えています。【長尾真希子】