アメリカ軍の攻撃の1か月前「平和を!」のメッセージが込められた絵を見せてくれた子どもたち=バグダッド市内のマイス小中学校で20日
毎日小学生新聞の編集部には、毎日たくさんの手紙が届きます。時々、はっとするような鋭い質問も届きます。
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大阪市の小学4年生、Kさんからの手紙は、その一つでした。こう始まっています。
「5月2日の毎小を読みました。日本の自えい隊は一人も死んでいない事にびっくりしました。なのに同めい国のアメリカは数万人も死んでいるのですね。びっくりしました」
5月2日(一部地域は3日掲載)のこのコラムで、私はかしわ餅……じゃなくて、憲法9条の話を書きました。日本国憲法には「戦争はしない」と定めた憲法9条があること、太平洋戦争が終わってから75年、日本は一人の「戦死者」も出していないこと、を書きました。
Kさんはこう続けます。
「世界をかんがえると、たくさんの兵士が死んでいるのに、日本は何も力を出していないのかと思います。外国の人が太田さんの文をよむと、日本も力をかせよ!と思うと思います。
どうして日本の自えい隊は世界のためには力をかせないのですか? けん法9条のせいかと思います。日本ががんばれば、アメリカの死ぬ兵士が少なくなると思います。太田さん、おしえてください」
うわっ、鋭い。日本に住む私たちは、大抵の場合、ごく普通に日本の立場からものを考えます。なのにKさんは、アメリカという国や、アメリカの兵士の立場からも考えています。アメリカに住む子どもなら当たり前かもしれないけれど、日本に住む子には普通はなかなかできないことです。
違う立場の人から見たらどうなのか。それを考えるのはものすごく大切なことです。
私がそのことを本当に身にしみて分かったのは、30歳を過ぎて、記者としてイラク戦争(2003年)を取材した時でした。
ちょっと長くなるけれど、ちょっと難しいかもしれないけれど、どうか読んでください。
イラク戦争は、アメリカとイギリスなどの国々が「イラクのフセイン大統領(当時)が核兵器など大量破壊兵器を隠し持っている」として、フセイン政権を倒そうと始めた戦争でした。当時の日本の総理大臣は、小泉純一郎さん(今の小泉進次郎・環境大臣のお父さん)で、日本はアメリカを全面的に支持しました。アメリカは、これはフセイン政権に苦しめられている民衆を救う戦争だとして、作戦名を「イラクの自由作戦」と名付けました。
私は、戦争が始まった時、中東の国、カタールにあるアメリカ軍の基地にいました。ここにアメリカ軍の前線司令部があったからです。
この基地からはたくさんの戦闘機が、イラクを攻撃するために飛び立っていきました。2003年3月20日の夜明け前、アメリカ軍とイギリス軍はイラクの首都、バグダッドへの大規模な攻撃を開始しました。
来週に続きます。【編集長・太田阿利佐】