伐採が進む山のスギ林。跡地に植栽をしないと、山崩れなど災害の原因になります
Q 山の木がほとんどスギなのはなぜ? いつ誰が植えたの?(鹿児島県南さつま市、小2、男子)
終戦後に植えたが切り倒されず残る
A 森や林のうち、人が木を植えたり育てたりして管理しているものを人工林、そうでないものを天然林と呼びます。人工林の面積は森林全体の約4割で、スギは人工林の4割ほどを占めます。森林全体でもスギは約2割を占めます。北海道・沖縄の一部を除いて、日本全国に植えられています。確かに多いですね。
森林の保護や利用を担当する役所・林野庁の森林利用課の神山真吾さんに話を聞きました。
スギは日本の固有種(日本以外で自然に育ったものがない種)です。成長が早く、まっすぐ高く伸びて加工しやすいのが特徴です。古くから建物はもちろん、たるやおけなど日用品の材料としても使われてきました。最も身近な木の一つで、秋田県や富山県など、スギを県を代表する木「県木」としているところもあるほどです。
スギが全国的にたくさん植えられるようになったのは、江戸時代からです。江戸(東京)や大坂(今の大阪)といった大都市向けの木材を作るために、木を人工的に植えて育てる造林が盛んになり、その主役はスギでした。明治時代以降もどんどん植えられていきました。
1930年代に入ると、日本は中国大陸で戦いを始め、41年にはアメリカやイギリスなどとも戦争を始めました(太平洋戦争)。このとき、多くの木が切られ資材や燃料とされました。終戦後は、復興や経済発展のために大量の木材が必要となりました。また洪水や土砂崩れを防ぐ防災の点からも、木の必要性が訴えられるようになりました。そこで歓迎されたのがスギでした。木々が伐採された跡地に、大量のスギが植えられました。
ところが、海外から安い木材が輸入されるようになると、切り倒されるスギは減少しました。林業に携わる人も減りました。当時植えられたスギは今、木材にするのにちょうどいい時期を迎えていますが、その多くが残されたままです。
スギの花粉は、風に乗って遠くまで運ばれます。この花粉によって引き起こされるのがスギ花粉症です。花粉症とは、植物の花粉が原因となって、くしゃみや鼻水などのアレルギー症状を起こす病気です。現在、日本人の約3割がスギ花粉症といわれています。
花粉対策の柱の一つとしてスギの伐採が挙げられます。しかし、伐採するだけでは森林破壊につながります。災害を引き起こす可能性もあります。また切った木を無駄にせず、有効に利用する方法も考えなければなりません。
国はスギの伐採とともに花粉の少ないスギなどへの植え替えを進め、切った木の活用を促そうとしています。しかし完了までには長い時間がかかります。【長岡平助】
スギの木は真っすぐ高く伸びるため、加工しやすく、はば広い用途に使われます