「名探偵夢水清志郎」「怪盗クイーン」「都会のトム&ソーヤ」などのミステリーで人気のはやみねかおるさん(56)が、作家デビュー30周年を迎えました。個性豊かなキャラクターと本格的なミステリーで、いつの時代も少年少女の心をつかんできました。はやみねさんに、これまでの道のりや創作の原点について聞きました。
「長いようで、あっという間の30年でした。人生の半分以上、書いていることになります」。はやみねさんは1989年に講談社児童文学新人賞で「怪盗道化師」が入選し、翌年作家デビューしました。
小6で初めて書く
小学生のころから、シャーロック・ホームズなどのミステリーやSF小説を読んでいました。作家になりたいと思ったのは、小学3年生の時。6年生で初めて小説を書きました。お兄さんの影響で三重大学の教育学部に進学。教育実習で子どもたちから「先生」と慕われたことに感動し、小学校の先生になりました。
45分の授業で5分あまってしまい、子どもたちに短い話を聞かせるようになりました。ある日、自分が考えた話をすると「おもしろくない」と言われました。そのショックから、おもしろい話を考えるようになりました。
先生になって3年目。何事にも真剣になれない子どもたちに身をもって教えるため、「賞に入らなかったら小説を書くのをやめる」と宣言し、子どもたちに聞かせた話を講談社の新人賞に応募しました。
覚悟を持って
数ある作品の中でも、デビュー作の「怪盗道化師」は思い出深い作品だといいます。「当時、クラスで悪口がはやったとき、新人教師のぼくは、どうすればいいかわからず途方に暮れてました。そこで、悪口を盗む泥棒の話を書いて、子どもたちに読んでもらったわけです」。それ以来、覚悟を持って、「子どもたちのための」物語を書き続けています。
これまでに、ものぐさで記憶力ゼロの元大学教授が活躍する「名探偵夢水清志郎」、年齢も性別も不明な怪盗を描いた「怪盗クイーン」、中学生コンビが街中で推理と冒険を繰りひろげる「都会のトム&ソーヤ」などの人気シリーズを生み出してきました。
おもしろい話を書くためには、自分がワクワクするかどうかを大切にしています。「ネタは出し惜しみせず、徹底的に詰め込むようにしています。自分が書いていておもしろくない物語は、書き上がる寸前でもボツにします」と妥協を許しません。
読んだ子どもたちが「おもしろかった」と言ってくれたり、今まで本を読む習慣がない子が「作品をきっかけに本を読むようになった」と言ってくれたりする時が「最高に幸せ」と話しました。【篠口純子】
30周年を記念して、クイーンや夢水清志郎、虹北恭助など、はやみねさんの作品の主要なキャラクターが登場する「令夢の世界はスリップする 赤い夢へようこそ-前奏曲―」(講談社/1650円)が22日ごろ発売されます