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子ども向けの本を出版した作家さんたちに、創作の背景や自身の子ども時代について聞きます。

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らかんが時代じだい変化へんか 八尾やつお慶次けいじさん

 みちばたの「らかんさん」をかたに、150ねんかん人々ひとびとらしの変化へんかえがいた絵本えほん「やとのいえ」。「やと」とは、なだらかなおかはさまれたあさたにのことです。東京とうきょう郊外こうがい多摩丘陵たまきゅうりょうのやとをモデルに絵本えほんげた八尾やつお慶次けいじさん(47)に、作品さくひんへのおもいをきました。【長尾ながお真希子まきこ

 ――八尾やつおさんは、らかんので2013ねんにイタリア・ボローニャ国際絵本原画展こくさいえほんげんがてん入選にゅうせんしました。そして、デビューさくとなる今回こんかいの「やとのいえ」でも、らかんは物語ものがたりのカギとなって登場とうじょうします。どうして、らかんにみせられたのですか。

 八尾やつおさん らかんとは、ふるくから石像せきぞう彫刻ちょうこくなどで人々ひとびと信仰しんこうあつめてきた仏教ぶっきょう修行しゅぎょうしゃ聖者せいじゃのことです。京都きょうと嵐山あらしやまの「愛宕おたぎ念仏寺ねんぶつじ」には、1200たいいしのらかんさんがいます。ここのらかんさんは、仏師ぶっしではなく、一般いっぱん人々ひとびとったので、自由じゆうでのびのびとした表情ひょうじょうをしています。はじめて境内けいだいおとずれたときよるになると本当ほんとうにらかんさんがうたったり、おどったりしているのでは……とまるで絵本えほん世界せかいんだようで感動かんどうしました。それ以来いらい、らかんさんや仏教ぶっきょう興味きょうみち、らかんさんのえがはじめました。

 ――らかんさんに物語ものがたりかたらせたのは、なぜですか。

 八尾やつおさん だれかのとおして、物語ものがたりをつむいだほう面白おもしろいとおもいました。イラストは1まいあたり、下絵したえやく週間しゅうかんいろぬりにやく1かげつかんかかりましたが、えがくより、文章ぶんしょうほう大変たいへんでしたね(わらい)。

 ――1さつ絵本えほんつくるのに、6ねんかんかかったそうですね。

 八尾やつおさん 専門家せんもんか編集者へんしゅうしゃ時代考証じだいこうしょうをしてもらい、農具のうぐやかやぶき屋根やねなどのこまかい部分ぶぶんまでこだわってこまかくえがきました。たとえば、らかんさんにえていたコケも、ニュータウン開発かいはつは、すなぼこりにまみれ、最終的さいしゅうてきには、コケもれてしまっています。でも、どのだいでも、わらず、らかんさんに畏敬いけい(おそれうやまうこと)のねんいだひとがいるということをえがきたかった。ぼくにとってこの6ねんかんは、たのしく、やりがいがあるものでした。

 ――どうしてずっとおな場所ばしょから絵本えほんいたのですか。

 八尾やつおさん おな場所ばしょから絵本えほんとして世界的せかいてき有名ゆうめいな「ちいさいおうち」(バージニア・リー・バートンちょ)と「ひゃくねんいえ」(ロベルト・インノチェンティちょ)に影響えいきょうされたというのもありますが、いちがけてみたかった。また、手間てまひまかけた重厚じゅうこうほんつくりたいとのおもいもむかしからありました。時代じだいうつわりをながら、いま、みなさんがらしている土地とちにも、人々ひとびとらしがあったということに、おもいをはせてもらえたら、うれしいです。


 ☆やとのいえ(偕成社かいせいしゃ/1980えん

 1けん農家のうか舞台ぶたいに、明治時代めいじじだいはじめから現代げんだいまでの150ねんかん人々ひとびとらしの変化へんかえがきます。はたけまもっていた農村のうそんが、戦後せんご団地だんちやマンションがならぶニュータウンへと姿すがたえ……。


 ■プロフィル■

 1973ねん神奈川県かながわけん相模さがみはらまれ、大阪府おおさかふそだち。宝塚造形芸術大学たからづかぞうけいげいじゅつだいがく卒業そつぎょう。さしに「おはぎをつくるおばけ」(すずき出版しゅっぱん)など。兵庫県ひょうごけん在住ざいじゅう

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