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的川博士の銀河教室

宇宙開発の歴史や宇宙に関する最新ニュースについて、JAXA名誉教授の的川泰宣さんが解説する長寿連載です。

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的川博士の銀河教室 614 日本の次期主力 ロケットH3

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打ち上げ、来年度に延期

 日本は現在、大型ロケットとしてはH2AとH2Bを持っており、鹿児島県の種子たねがしま宇宙センターから打ち上げています。より大きいH2BはH2Aを大型化して、国際宇宙ステーション(ISS)に補給機「こうのとり」を運ぶことができるようにしたもので、今年夏の無人補給機「こうのとり」9号機の打ち上げをもって、運用を終了しゅうりょうしています。「こうのとり」は、打ち上げた9機がすべて成功し、飛行士たちの宇宙滞在たいざいに大きな貢献こうけんをしました。このふたつのロケットを合わせた成功率は98%という驚異きょうい的な実績で、世界で最も信頼性しんらいせいの高いロケットと評価されているのです。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業みつびしじゅうこうぎょうは、さらに高性能で使いやすいロケットをめざして、H2AとH2Bの次の世代のロケット「H3」を開発しており、試験機1号機を今年度中に打ち上げる予定でした(図)。メインエンジンは「LE-9」(写真)で、H2Aに比べて部品の数を大幅おおはばに減らしてコストを下げる一方、エンジンの推力を1.4倍に引き上げるという野心的なねらいを持っています。このたび、このメインエンジンLE-9の設計の一部に変更へんこうを加える必要が生じ、打ち上げの時期を1年延期することに決定しました。

 今年5月に種子島宇宙センターでエンジンの試験を行った後の内部点検の際に、燃料(液体水素)と酸化剤ざい(液体酸素)を合流させて燃やす「燃焼室」という部分の内壁ないへきに、最大で幅0.5ミリ、長さ1センチくらいの穴が14カ所見つかりました。そしてその燃焼室に燃料の液体水素をおくむためのターボポンプという機器のタービンの羽根2枚にもひび割れが発見され、そのため設計変更をする必要が生じたようです。通常運転よりも高い過酷かこくな温度での燃焼にえられるかどうかの実験だったので、かべの温度は約1000度まで上昇じょうしょうしたはず。冷却れいきゃくが十分にできなかった可能性がありますね。

 この設計変更のため、現在のところ、H3試験機1号機は2021年度、試験機2号機は22年度の打ち上げになる見込みこみです。H3ロケット開発の眼目は「使いやすさ」です。日本の宇宙活動は、天気予報からブラックホールまで、まさに私たちの生活のさまざまな側面に浸透しんとうしています。それらの日本の宇宙ミッションを、政府・民間を問わずH3によって大いに加速するとともに、デビュー以降の20年間を見据みすえ、世界のさまざまな国からの要求に応えて、毎年6機程度を安定して打ち上げることをめざしています。

 もちろん日本のロケット技術の総力を挙げて完成を急ぐのでしょうが、拙速せっそくに走らず、長い目で見て世界から信頼される素晴らしいロケットを再び作り上げてくれることを期待しています。


的川泰宣まとがわやすのりさん

 長らく日本の宇宙開発の最前線で活躍かつやくしてきた「宇宙博士」。現在は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の名誉めいよ教授。1942年生まれ。


日本宇宙少年団(YAC)

 年齢・性別問わず、宇宙に興味があればだれでも団員になれます。 http://www.yac−j.or.jp


 「的川博士の銀河教室」は、宇宙開発の歴史や宇宙に関する最新ニュースについて、的川泰宣まとがわやすのりさんが解説するコーナー。毎日小学生新聞で2008年10月から連載れんさい開始。カットのイラストは漫画家まんがか松本零士まつもとれいじさん。

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