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江戸東京見本帳

紋 京源 日本発のロゴデザイン

「紋章上繪師」は竹製のコンパスと極細の筆、墨、定規などを巧みに使い、繊細で美しい家紋を描く=東京都台東区で9月、佐々木順一撮影
反物に鶴の家紋を墨で描く紋章上絵師の波戸場承龍さん
家紋の技法を応用し、パソコンで描いた作品。大小さまざまな円だけで馬を描いています。円の数は約250個だそうです=波戸場承龍さん提供
家紋の技法を応用し、パソコンで描いた作品。大小さまざまな円だけで馬を描いています。円の数は約250個だそうです=波戸場承龍さん提供
江戸時代の弘化2年刊行の「紋切形二編」には、紋の書き方や、紙切り遊びの紋切形などが書かれています=国立国会図書館デジタルコレクションより
紋を描く道具。手前から竹製のコンパス「ぶんまわし」、溝引き定規、ガラス棒、極細の筆
紋四つ菱
紋源氏車
紋揚羽蝶
紋下り藤
紋九曜星
波戸場承龍さんが監修した紋切形の工作セット
正方形の紙を五つ折りにし型紙を合わせ切ると「太の字桜」の紋ができました
正方形の紙を五つ折りにし型紙を合わせ切ると「太の字桜」の紋ができました
正方形の紙を五つ折りにし型紙を合わせ切ると「太の字桜」の紋ができました
紋章上絵師の波戸場承龍さん(左)、耀次さん親子

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京源のサイトhttp://www.kyogen-kamon.com/

 みなさんは自分じぶんいえの「家紋かもん」をっていますか? 家紋かもんというのは、それぞれのいえにある、独自どくじのマークのようなもので、日本にっぽんのほとんどのいえ家族かぞく)は、なにかしらの家紋かもんち、一族いちぞくあかしとして使つかつづけてきました。自分じぶん家紋かもんからないひとは、家族かぞくだれかにいてみてください。いえなかかけることはすくなくなりましたが、おはかなど、ご先祖せんぞまつ場所ばしょくと大抵たいてい、この模様もようきざんであります。それがあなたの家紋かもんです。

 この家紋かもんいまつたえる仕事しごとをしているひとがいます。東京とうきょう上野うえのちかくに工房こうぼうきょうげん」をひら波戸場承龍はとばしょうりゅうさん(63)、耀次ようじさん(36)親子おやこです。着物きものに「家紋かもん」をく「紋章もんしょう上絵うわえ」というのが、正式せいしき職業しょくぎょう名前なまえです。

 ■庶民しょみん活用かつよう

 平安後期へいあんこうき(11世紀後半せいきこうはん~12世紀末せいきまつ)から使つかわれていたといわれる家紋かもんですが、本格的ほんかくてきひろがったのが江戸時代えどじだいでした。武士ぶし階級かいきゅうには名字みょうじせい)がゆるされていましたが、一般いっぱん庶民しょみん公的こうてきには名前なまえだけ。しかし、家紋かもん自由じゆう使つかえました。当時とうじ日本人にっぽんじん服装ふくそうは、すべてが着物きものです。武士ぶし正装せいそうである「紋付もんつはかま」には、名前なまえとお家紋かもんいていましたし、商人しょうにんみせのロゴマークとして多用たようしました。庶民しょみんでも気楽きらく自分じぶんふくもの家紋かもんれることができたのです。

 「文字もじきもできなかった庶民しょみんにとって、将軍しょうぐん大名だいみょう家紋かもんはあこがれであり、ステータスだったのでしょう。あつらえひん特注とくちゅうひん)には家紋かもんれ、それが自分じぶんのものだという目印めじるしでもあったのです」としょうりゅうさん。紋章もんしょう上絵うわえの「上絵うわえ」とは着物きものもんれることで、本来ほんらいは「下絵したえ」にたいし「仕上しあげの」を意味いみします。家紋かもんれる上絵うわえは、その一品ひとしなを「わがのもの」に「仕上しあげる絵師えし」といえます。

 ■核家族化かくかぞくか衰退すいたい

 かつてはどこのまちにもいた職人しょくにんでしたが、明治時代めいじじだいになり、西洋文化せいようぶんかはいって人々ひとびと着物きものなくなったことで、家紋かもん使用しようもぐんとってしまいました。第二次世界大戦だいにじせかいたいせん家制度いえせいどもなくなり、核家族かくかぞくすすむとともに「○○」というかんがえもうすらぎます。昭和しょうわ40ねんだい(1965~74ねん)になるとシルクスクリーンの印刷技術いんさつぎじゅつ着物きものにも使つかわれるようになり、いまでは手描てがきで家紋かもんれる職人しょくにん全国ぜんこくでもわずかにのこるのみとなりました。

 ■えん直線ちょくせんだけ

 工房こうぼう実際じっさい反物たんもの着物きものようぬの)に家紋かもん作業さぎょうせてもらいました。ふでのほか、使つかうのは「ぶんまわし」という和製わせいコンパスと定規じょうぎだけ。えん直線ちょくせんふたつの道具どうぐだけで、基本的きほんてきにはどんな複雑ふくざつ家紋かもんけるそうです。それは、まさに江戸時代えどじだいからつづ伝統でんとう意匠いしょう(デザイン)。こまかなつる模様もようが「ぶんまわし」で正確せいかくえがかれていきました。「小学生しょうがくせいでもコンパスと定規じょうぎがあれば、たような作業さぎょうはできますよ。やってみて」としょうりゅうさん。

 ■世界せかいばたくみなもと

 波戸場はとばさん親子おやこきんねん、この伝統でんとう技法ぎほう現代げんだいふうにアレンジしたいろいろな作品さくひん積極せっきょくてきつくつづけています。衣装いしょう建築物けんちくぶつかべ家紋かもんをアレンジしてデザインしたり、家紋かもん使つかったレーザーショーを演出えんしゅつしたり。最先端さいせんたん西洋せいようのファッションショーの衣装いしょう使つかわれたデザインのもとが家紋かもんだとると、日本人にっぽんじんとしてほこらしくなります。

 「家紋かもんには現代げんだいのデザイン感覚かんかくにもつうじる、独特どくとくかたがあります。じつゆたかでおくふかいです。このうつくしいかたちねむらせることなく、現代げんだい生活せいかつなかとしんでいく。それがぼくたちの仕事しごとだとおもっています」と耀ようさん。

 1000ねん以上いじょうつづ日本にっぽん伝統でんとう意匠いしょうは、いま世界せかいへとばたくあたらしいデザインのみなもとでもあるのです。【ぶんもり忠彦ただひこ写真しゃしん佐々木ささき順一じゅんいち

ふたつの道具どうぐであらゆるえん

 家紋かもんは、たけでできた和製わせいコンパス「ぶんまわし」で、半径はんけい調整ちょうせいしながらすべての曲線きょくせんきます。竹製たけせいのぶんまわしはいまはもうつく職人しょくにんがいないそうです。直線ちょくせん使つかうのは「みぞ定規じょうぎ」。ふでとガラスぼう一緒いっしょち、定規じょうぎみぞにガラスぼうてスライドすると、定規じょうぎからはなれた場所ばしょにきれいな直線ちょくせんけます。ふで独特どくとくで、穂先ほさきかたく、むかしはネズミの、いまはイタチの使つかっています。


 ■家紋かもんあれこれ

 ●平安時代へいあんじだい 藤原氏ふじわらし

 日本にっぽん家紋かもんひろがったのは平安時代へいあんじだい貴族きぞく中心ちゅうしん君臨くんりんした藤原氏ふじわらしはそのかずえたため、近衛このえ九条くじょうなどに枝分えだわかれし、そのさい自分じぶんいえのマークとしてふじ牡丹ぼたんなどをもとにした独自どくじ家紋かもんつくっていきました。衣服いふく牛車ぎっしゃなどに家紋かもんくことで、どのいえ所属しょぞくするかが区別くべつできたためです。おなふじ牡丹ぼたんでも、分家ぶんけになると微妙びみょうちがったデザインがまれ、種類しゅるいえていきました。

 ●5万種まんしゅ以上いじょう!? 犬猫いぬねこはなし

 しょうりゅうさんによると家紋かもんは「5まん種類しゅるい以上いじょうはあるようです」。おもなモチーフは300~400種類しゅるい。(1)つきほしなどの「天文てんもん地文ちもんもん」、(2)草木くさきえがいた「植物しょくぶつもん」、(3)鳥獣ちょうじゅう昆虫こんちゅうなどの「動物どうぶつもん」、(4)武具ぶぐなどの道具どうぐ食器しょっきをかたどった「器材きざいもん」、(5)さまざまな文様もんようれた「文様もんようもん」――などに分類ぶんるいできます。もっとおおいのが植物しょくぶつもんで、つぎ器材きざいもん動物どうぶつでもうまやウサギ、ニワトリ、りゅう、エビ、カニなどはありますが、なぜかいぬねこうし、ネズミ、魚類ぎょるいはないそうです。

 ●戦国武将せんごくぶしょう

 歴史れきしきのひとにとって身近みぢかなのが戦国武将せんごくぶしょう家紋かもんでしょう。織田信長おだのぶながの「織田瓜おだか」、豊臣秀吉とよとみひでよしの「しちのきり」、徳川家康とくがわいえやすの「三葉みつばあおい」、上杉謙信うえすぎけんしんの「たけ二羽にわすずめ」、武田信玄たけだしんげんの「よつわりびし」、明智光秀あけちみつひでの「桔梗ききょう」、石田三成いしだみつなりの「大一大万大吉だいいちだいまんだいきち」、伊達政宗だてまさむねの「たけすずめ」、真田幸村さなだゆきむらの「六文銭ろくもんせん」などが有名ゆうめいです。関ケせきがはら大坂おおさかじんなど、武将ぶしょう密集みっしゅうした戦場せんじょうでは、家紋かもんいたのぼりばたによってだれじんかがかる目印めじるしとなったのです。


 ◆江戸えどいき紙遊かみあそび「紋切形もんきりがた

 家紋かもんをどのいえでもつようになった江戸時代えどじだい人々ひとびとしたしまれた紙切かみきあそびが「もんきりがた」です。かみり、型紙かたがみとおりにくと、家紋かもんかたちになります。弘化こうか5(1848)ねん発行はっこうされたほんもんきりがた二編にへん」にはかたかた紹介しょうかいされています。「簡単かんたん作業さぎょう複雑ふくざつかたちができあがるもんきりがたは、とてもクリエーティブ。どもから大人おとなまで夢中むちゅうになりますよ」としょうりゅうさん。


 ●きょうげん

 http://www.kyogen−kamon.com/

 本業ほんぎょうは「紋章もんしょう上絵うわえ」として着物きもの家紋かもん仕事しごとですが、最近さいきん家紋かもんをモチーフにしたデザイン作成さくせい中心ちゅうしんとか。「海外かいがいけにはデザイナー、アーティストとして紹介しょうかいされることがおおいですね」と耀次ようじさん。NHKのEテレの番組ばんぐみ「デザインあ」では「もん」のコーナーで制作せいさく監修かんしゅう東京とうきょう東上野ひがしうえのにある工房こうぼうには、おおきなパソコンがかれ、デザイン事務所じむしょのような雰囲気ふんいきです。ウェブサイトでは、家紋かもんけるワークシートや工程こうてい動画どうがることができます。


 次回じかいの「江戸東京えどとうきょう見本帳みほんちょう」は11がつ24一部地域いちぶちいきは25にち)に掲載けいさいします。

 協力きょうりょく江戸東京えどとうきょうきらりプロジェクト

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