幽霊は本当にいますか? (大阪市東淀川区、小5、女子)
◆マツカワさん
いないとは言えない
幽霊は本当にいるかもしれないし、いないかもしれない。たまに「もしかして、幽霊?」と思うことはある。でも、「暗闇に白い服をきた幽霊が!」と思ってよく見たら、洗濯物が木にひっかかっているだけだったり、「あっちの部屋で怪しい物音が!」と思ったら、つっぱり棒が落ちただけだったりする。私ははっきり会ったことがないから、「いる」とは言いきれない。だからといって、いないとも言いきれないよね。だって、私が見たことないだけで、この世のどこかにはいるかもしれないもん。
いや、よく考えたら、すでに会ってるけど気づいてない可能性だってあるな。幽霊に限らず、目の前の人がそうだと気づかずに過ごしてることって、けっこうあるもん。幽霊は白い服を着てて足がないってイメージがあるけど、本当かな? 10月のこの欄で、コーノさんが「私はゾンビだ」って言い出したみたいに、今度はゴードさんが「私、幽霊なんだ」って言い出したらどうしよう?
◆ゴードさん
どうやって確かめる?
私は幽霊じゃないよ! でも、自分が幽霊になっていることに気づいていないだけだったらどうしよう。マツカワさんが変なこと言うから怖くなっちゃった。私は透き通っていないし足も生えているし、大丈夫だと思うけど、幽霊がどんなものかわからない以上、安心はできない。
幽霊は「本当に」いますか、って、とってもいい問いだと思うんだ。ここには、「幽霊がいるという話はよく聞くけれど」という前提がある。他の人たちが、幽霊がいるとかいないとか話していても、それは本当に幽霊がいるかどうかの証拠にはならないんだね。本当にいるかどうかは、他の方法でちゃんと確かめてみないといけない。
だけど、幽霊がいるかどうかや、自分が幽霊かどうかは、どうしたら確かめたことになるんだろう。「うらめしや~私は幽霊ですよ~」ってみんなの前に出てきてくれたら、確かめたことになるかな。心霊写真は、証拠になるかな。ならないよなあ。
◆コーノさん
人間の空想の産物
幽霊って、体のない魂だけの存在だと言われているね。10月のこの欄で「魂」をテーマにした時、ゾンビの話をしたけれど、ゾンビの逆だね。ゾンビは、魂のない、動く肉体と言える。でも、幽霊に体がないかというと、本当はそうじゃない。
透き通っていて足がないのが、典型的なイメージだけど、半透明でも見えるし、音を立てたり、「うらめしや~」としゃべったりする。半透明でも目に見えるには、光を反射させなければならない。声や音を出すには空気を振動させないといけない。光を反射させたり、空気を振動させたりするのは、やはり物体だ。
ということは、幽霊は物質でできている。純粋な魂なんかじゃない。しかも、幽霊のような変な物体なんか存在しない。だから、断言しよう。幽霊はただの作り話にすぎない。人間の空想の産物だ。体から離れた魂なんか、実際にイメージすらできない。でも……私はゾンビだけどね。<イラスト・熊谷理沙>
◆哲学カフェは、一つだけの正解がない問いを語り合う哲学対話です。
■ツチヤさん…土屋陽介
勉強は苦手だが考えるのは好きな子どもを経て大学で哲学と出会う。哲学対話と落語が好き。開智国際大准教授
■コーノさん…河野哲也
心とからだの関係に関心がある。子どもと哲学の話し合いをするのが好き。イヌと走るのが趣味。立教大教授
■ゴードさん…神戸和佳子
なぜ生きるのか考えていたら、哲学者に。口癖は「そもそも」。公立・私立の中学高校で非常勤講師
■ムラセさん…村瀬智之
考える事が好きで哲学を学んだ。賢い人はどんな人かを考え中。ラジオを愛する40代。東京高専准教授
■マツカワさん…松川えり
科学と社会の関係に関心がある。小食なのに食いしん坊。哲学対話を開催する団体「カフェフィロ」副代表
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