「手歌」と歌声を合わせる「ホワイトハンドコーラス京都」のメンバー=京都市北区で11月22日、南陽子撮影
不思議なコーラスを見ました。
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そのコーラスには、声で歌う人たちと、白い手袋で歌う人たちがいるのです。歌声を聴きながら、白いチョウのような、白い小鳥のような手の動きを見ていると、胸の奥が温かくなるような、不思議な気持ちがしてきます。
インターネットで私がこのコーラスを見たのは、京都市の小学2年生、西村潤さんの手紙がきっかけです。
「わたしは生まれつきのなんちょうで人工内耳とほちょうきをつかって音をききとっています。今日はわたしが入っているコーラスたいについてごしょうかいしたいと思います」とあります。
コーラス隊の名は「ホワイトハンドコーラス」。
「目が見えない子はうたをうたって、耳が聞こえない子は手か(手歌)という手でうたうコーラスたいです」
ええっ、そんなコーラス隊があるんでしょうか。
ありました! それも世界のあちこちに。
1975年、南アメリカのベネズエラで、音楽家のアブレウさんが「音楽で人を救いたい」と考え、貧しい地域の子どもに無料で音楽を教え始めました。やがてその地域で麻薬の使用や暴力が減り、人々が未来に希望を持つようになったのです。この手法は「エル・システマ」と呼ばれ、世界に広がりました。この中から20年ほど前、目が見えない人が中心の「声隊」と、「手歌」で音楽を表現する「サイン隊」による「ホワイトハンドコーラス」が生まれ、障害がある人やそうでない人が参加しています。
でも、目が見えない人はどうやって指揮者の合図が分かるのでしょうか。コーラス隊の指導者、コロンえりかさんが教えてくれました。「指揮者が息を吸うかすかな音、手を動かす時の風で分かる子もいれば、目の見える子と並んで立って、手で合図してもらう子などそれぞれです」
「手歌」も、歌詞をそのまま手話にするのではなく、歌の心が伝わるようにみんなで相談して、一つ一つ表現を決めるのだそうです。そして声隊とサイン隊がぴったり息を合わせないといけません。
西村さんは2年前、ホワイトハンドコーラスを初めて見て夢中に。でも練習場は東京でなかなか行けません。ところが新型コロナウイルスの影響で、インターネットを使ったオンライン練習が始まり、参加できるようになりました。京都の仲間も増えました。
西村さんは「ホワイトハンドコーラスは人と人をつなげてくれる。友だちも増えて、とても楽しい。みんなに知ってもらいたい」と話します。
西村さんも出演するオンラインコンサートが29日午後3時からあります。無料で誰で見られます。インターネットのPeatixのサイトで「ホワイトハンドコーラス」で「イベント検索」してください。登録が必要なので、おうちの人にお願いしてください。感想も待ってます。【編集長・太田阿利佐】