15歳のニュース
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さる11月24日、中国・海南(かいなん)島の文昌(ぶんしょう)衛星発射センターから長征(ちょうせい)5号ロケットで打ち上げられた中国の月面無人探査機「嫦娥(じょうが)5号」(写真)。打ち上げから約36分後に予定の軌道(きどう)に投入され、月面で土壌(どじょう)サンプルを採取し地球に持ち帰る旅に出発しました。1960~70年代の米国と旧ソ連以来、3カ国目となる月面からの「サンプルリターン」(天体から土壌などを持ち帰る探査)は、中国にとって初めての試みです。
「嫦娥5号」は月面への着陸機や地球への帰還カプセルなど四つの機器(計約8トン)で構成され、月面でロボットアームを用いて約2キロの土壌を採取し、これを月周回軌道(つきしゅうかいきどう)で帰還カプセルに移し替(か)えました。そして12月17日未明にこのカプセルと共に、中国の内モンゴル自治区に着地しました。月からサンプルを持ち帰ったのは1976年の旧ソ連以来44年ぶりです。
中国は2004年から月探査計画をスタートさせ、月周回飛行や無人探査機の着陸などに取り組んできました。今回の嫦娥5号を無人月探査の集大成と位置づけています。将来は、有人月面探査を視野に入れているそうです。
中国の月探査プロジェクトは07年の「嫦娥1号」発射を皮切りに、13年には「3号」が旧ソ連以来37年ぶりに月面に着陸。地球から直接交信できない月の裏側に着陸させるため、中継(ちゅうけい)用の通信衛星を打ち上げた上、19年1月には「4号」が世界で初めて月の裏側に着陸しました。
「嫦娥5号」のミッションはさらに難度が高く、さる12月1日、月面の岩石や土壌を地球に持ち帰るため、月の火山「リュムケル山」に軟着陸(なんちゃくりく)しました(図)。正確な着陸場所は月の西経(せいけい)51.8度、北緯(ほくい)43.1度の地点。そしてカメラや分光計、レーダーなどを用いて周辺を探査した上で、シャベル、ドリル、ロボットアームなどで土などのサンプルを採取することに成功しました。
さて次は帰らなくてはなりませんが、月面には発射台システムがありません。そこでアポロ計画と同じように、着陸モジュールの下半分を上昇(じょうしょう)モジュールの「仮設発射台」としました。そして200キロ上空の軌道上に待機している軌道モジュールと帰還モジュールの結合体とドッキングし、月の試料を無事に帰還モジュールの回収機に移し終えた後、上昇モジュールだけ月面に落とし、帰還モジュールと軌道モジュールの結合体は、月周回軌道を離(はな)れました。
素晴らしい成功を成(な)し遂(と)げた中国の技術者たちに拍手(はくしゅ)を送りましょう。
長らく日本の宇宙開発の最前線で活躍(かつやく)してきた「宇宙博士」。現在は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の名誉(めいよ)教授。1942年生まれ。
年齢・性別問わず、宇宙に興味があればだれでも団員になれます。 http://www.yac−j.or.jp
「的川博士の銀河教室」は、宇宙開発の歴史や宇宙に関する最新ニュースについて、的川泰宣(まとがわやすのり)さんが解説するコーナー。毎日小学生新聞で2008年10月から連載(れんさい)開始。カットのイラストは漫画家(まんがか)の松本零士(まつもとれいじ)さん。