柳原美砂子 毎日新聞 経済部副部長
政府の来年度予算案が21日、決まりました。基本的な活動に使うお金の総額(一般会計歳出)は106兆円超と過去最大です。規模が大きすぎて、ピンときませんね。スガ家という架空の一家の家計に例えてみましょう。
スガさんの給料(消費税などの税収)は2020年度、新型コロナウイルスの影響で急減しました。21年度も57万円と、当初の予定としては3年ぶりに60万円を下回りそうです。アルバイト代(その他収入)の6万円を入れて、収入は63万円の見通しです。
出ていくお金は増えそうです。家族の病院代など(社会保障費)に35万円、地方に住む家族への仕送り(地方交付税交付金)に15万円。子どもの教育費(文教・科学振興費)が5万円、家の修繕代(公共事業費)が6万円、警備代(防衛費)も5万円かかります。さらに、以前借りたお金の返済が23万円もあります。そのほか必要なお金を合わせると、支出は106万円に上る見通しです。
63万円の収入に対し、支出は106万円……。差額の43万円はまた借金に頼ることにしました。こうして毎年、足りない分を借りるので、借金の総額はどんどん膨らみ、家計は火の車です。
2020年度は途中で3回、新たにお金が必要になりました。新型コロナで困っている家族に配ったり、景気づけに旅行に行ったりしたのです。その結果、必要なお金は当初予定した103万円から、176万円に増えました。来年度も、新型コロナの状況次第で必要なお金が増えるかもしれません。
これが1兆円を1万円に換算した日本の財政の姿です。新型コロナに対応するため、他の国も支出を増やしていますが、ドイツのように返済計画をきちんと示している国もあります。むだづかいはないか、将来の返済についても考えているか。年明けの国会で、予算案についての議論をしっかり見ていかなくてはなりません。
経済部で、省庁や銀行、メーカーなどの取材を担当。趣味は散歩や山歩き。学生時代は少林寺拳法をやっていました。1973年福岡県生まれ。好物は、博多では生で食べることが多いサバ。