例年より1カ月早く並んだ縁起物の熊手や破魔矢=福岡県宗像市の宗像大社で2020年12月1日、青木絵美撮影
一足早くお参りする参拝客ら=さいたま市大宮区の武蔵一宮氷川神社で2020年12月21日、成澤隼人撮影
今年の元日、大勢の初詣客で混雑した成田山新勝寺の境内=成田市で2020年1月1日、中村宰和撮影
手水舎の張り紙=2020年12月18日、東京都小平市、小平神明宮で=木谷朋子撮影
初詣の分散参拝をお願いする看板、2020年12月18日、東京都小平市、小平神明宮で=木谷朋子撮影
新しい年の始まりに神社や寺にお参りすることを初詣といいます。新型コロナウイルスの影響で、来年の初詣はたくさんの人が集中しないように分散してお参りするように呼びかけられています。いつまでにお参りすればよいのでしょう? 初詣について、民俗学者で国学院大学大学院客員教授の新谷尚紀さんに聞きました。【木谷朋子】
初詣はいつからしているの?
初詣は明治時代以降に広まった習慣です。江戸時代の書物には「初詣」という言葉は出てきませんが、その年の縁起が良い方角(恵方)にお参りする「恵方参り」という言葉はありました。その「恵方参り」も江戸(今の東京)や大坂(今の大阪)などが中心で、全国的に行われているわけではありませんでした。
明治時代以前は、自分の家や地域の人たちがまつっている氏神様の社にこもって、年神様を迎えるのがしきたりでした。家で年神様を迎える人は、大みそかまでに掃除をして家をきれいにし、元日は静かに過ごしていました。これは「年ごもり」という習慣で、やがて、大みそかの夜に除夜の鐘を聞いてからお参りに行く「除夜詣」や元日の朝にお参りに行く「元日詣」に変化していきました。
今も、住んでいる地域の氏神様にお参りする習わしがあります。もちろん、その年の恵方にある神社やお寺にお参りする人もいますし、商売繁盛、家内安全、学問成就など、それぞれに御利益があるとされる有名な神社や、個人的に信仰している神社や寺などにお参りする人もいます。
お参りの仕方を教えて
神社へのお参りは「二礼二拍手一礼(二拝二拍手一拝とも言います)」が一般的です。2回おじぎをし、2回手を打ち合わせ、最後に1回おじぎをします。神社は神様がいるところなので、失礼にならないようにと、決められた作法で行います。作法は神社によっても違うことがあり、出雲大社(島根県)や宇佐神宮(大分県)など「二礼四拍手一礼(二拝四拍手一拝)」というところもあります。
まず、神社の鳥居をくぐるときに一礼します。入ったらお参りする前に拝殿の近くにある「手水舎」で、ひしゃくを使って手を洗い清めます。おさい銭は、厄や災い(不幸をもたらす悪いこと)をお金に移して投げ入れるお清めの行いで、いくら入れるかはそれぞれ考えて、感謝やお願いの気持ちを込めるのもいいでしょう。
お参りはいつするもの?
初詣は元日から松の内にすませるのがよいとされています。松の内とは玄関前に門松が飾られている期間のことで、正月飾りを片づける期間でもあります。現在の暦では1月7日ごろまでを松の内というのですが、関東地方では1月7日ごろまで、関西地方では1月15日ごろまでと、地域によって違いがあります。
大みそかから元日にかけての「除夜詣」や元旦にお参りする「元日詣」、または、三が日(1月1日~3日)にお参りすることが多いですが、無理にその期間に初詣をしなくてもよいそうです。正月=1月と考えて、1月中にお参りすればよいという考え方もあります。
何時ごろにお参りするのがよいなど、時間の決まりも特にありません。
お寺にお参りしてもいいの?
初詣は「神社へ行くもの」と思っている人もいるかもしれません。神社は「神様」、寺は「仏様」がいる場所といわれています。日本で、神社や寺がはっきりと区別されるようになったのは、明治時代の「神仏分離令」以降のことです。それまでは、神仏習合といって、人々は多くの神や仏を区別なく信仰していました。
初詣は神社でも寺でも、どちらに行っても良いのです。毎年、多くの人がお参りする明治神宮(東京都)や伏見稲荷大社(京都府)は神社で、浅草寺(東京都)や川崎大師(神奈川県)、成田山新勝寺(千葉県)は寺です。
寺でのお参りの方法は神社とは少し違います。まず、門の前で一礼をします。このとき、敷居を踏まずにまたいで入ります。手水舎で手を洗うのは、神社と同じです。本堂へ進んだら、一礼をしておさい銭を入れます。鰐口など鳴らすものがあれば1回打ち、静かに手を合わせます。この「合掌」が、パンパンと手を打つ神社と違う点です。最後に一礼をします。
もうお参りしているの?
新型コロナの影響で、全国各地の神社などでは、来年の初詣について、期間を2月ぐらいまで長くして混雑を避ける「分散参拝」を呼びかけています。明治神宮(東京都)では、大みそかは午後4時に閉まるそうです。「幸先よく新年を迎えられるように」と、今年のうちからお参りする「幸先詣」や「早詣」を打ち出す神社もあります。
また、行かなくてもオンラインでお参りできる取り組みも注目されています。愛宕神社(東京都)のサイトには「ヴァーチャル参拝」のページがあり、大鳥居の写真などが映し出されています。朝護孫子寺(奈良県)や神峯山寺(大阪府高槻市)では、毎月1日にオンラインで行ってきた「毘沙門天朔日参り」を元日に特別編としてライブ配信します。神田明神(東京都)では、夜間や早朝など、混雑を避けた参拝を勧めています。また、混み具合を伝えようと神社内の様子を1分ごとにライブ配信したり、お参りに来られない人向けにお守りやお札の郵送などにも対応しています。
来年は「三が日」にこだわらず、ゆっくり初詣へ行く人も増えそうですね。<え・内山大助>