日本全国お雑煮マップ　郷土色豊か

　お雑煮（ぞうに）にくわしい料理研究家（りょうりけんきゅうか）の粕谷（かすや）浩子（ひろこ）さんに、日本（にほん）各地（かくち）の特徴（とくちょう）的（てき）なお雑煮（ぞうに）を教（おし）えてもらいました。家族（かぞく）に聞（き）いたり、マップで新（あたら）しい味（あじ）を見（み）つけたりして、挑戦（ちょうせん）してみるのもおすすめです。【田嶋夏希（たじまなつき）】

豊作（ほうさく）や平和（へいわ）を祈（いの）る

　お正月（しょうがつ）にお雑煮（ぞうに）を食（た）べるのはどうしてでしょうか。おもちや野菜（やさい）、その土地（とち）でとれたものを年（とし）神様（がみさま）にそなえ、神様（かみさま）と同（おな）じ物（もの）を食（た）べることで、前（ぜん）年（ねん）の収穫（しゅうかく）や無事（ぶじ）に感謝（かんしゃ）し、新（あたら）しい年（とし）の豊作（ほうさく）や平和（へいわ）を祈（いの）るという意味（いみ）があるからです。お雑煮（ぞうに）は室町時代（むろまちじだい）の終（お）わりごろに貴族（きぞく）の間（あいだ）で食（た）べられ、江戸時代（えどじだい）になると一般（いっぱん）の人（ひと）にも広（ひろ）がりました。

　一口（ひとくち）にお雑煮（ぞうに）といっても、地域（ちいき）によって、さまざまな種類（しゅるい）があります。全国（ぜんこく）のお雑煮（ぞうに）について調（しら）べている粕谷（かすや）さんは、「となりの市（し）にいけば違（ちが）うものを食（た）べている場合（ばあい）もあるほどさまざまで、全部（ぜんぶ）で何（なん）種類（しゅるい）あるのか数（かぞ）えるのも難（むずか）しい」と言（い）います。

東（ひがし）は四角（しかく）、西（にし）は丸（まる）

　ただ、おもちの形（かたち）には東日本（ひがしにほん）と西日本（にしにほん）でおおまかな違（ちが）いが見（み）られます。富山（とやま）、岐阜（ぎふ）、愛知（あいち）を境（さかい）にして東側（ひがしがわ）に角（かく）もちが多（おお）く、西側（にしがわ）に丸（まる）もちが多（おお）いという傾向（けいこう）があります。もちの調理法（ちょうりほう）は、東（ひがし）は焼（や）くことが多（おお）く、汁（しる）はすまし汁（じる）です。西（にし）では焼（や）かずに煮（に）ることが多（おお）いのですが、例外（れいがい）もあります。

　中（なか）に入（い）れる具（ぐ）も地域（ちいき）によって違（ちが）いがみられます。岩手県大槌町（いわてけんおおつちちょう）のホタテ、イクラ、アワビや広島県（ひろしまけん）のカキなど、その地方（ちほう）の特産品（とくさんひん）を入（い）れて新（しん）年（ねん）を祝（いわ）うところもあります。

　愛知県名古屋市（あいちけんなごやし）の、もち菜（な）や福岡県（ふくおかけん）のかつお菜（な）など、地元（じもと）の人（ひと）にとっては当（あ）たり前（まえ）の食材（しょくざい）でも、全国的（ぜんこくてき）には知（し）られていないものもあります。お雑煮（ぞうに）のためだけに使（つか）われる伝統野菜（でんとうやさい）もあります。熊本県（くまもとけん）の水前寺（すいぜんじ）もやし、関西（かんさい）の雑煮（ぞうに）大根（だいこん）などです。

　粕谷（かすや）さんは「お雑煮（ぞうに）は地域（ちいき）食材（しょくざい）を次（つぎ）の世代（せだい）に伝（つた）えるのに重要（じゅうよう）な役割（やくわり）を果（は）たしている」と話（はな）します。

　（１）海（うみ）の幸（さち）がたっぷり

岩手（いわて）大槌町（おおつちちょう）

　三陸（さんりく）の海（うみ）の沿岸部（えんがんぶ）の大槌町（おおつちちょう）で食（た）べられているお雑煮（ぞうに）です。ホタテやアワビ、イクラが乗（の）った、水産業（すいさんぎょう）が盛（さか）んな地域（ちいき）らしい豪華（ごうか）なお雑煮（ぞうに）です。

　（２）おもちだけでシンプルに

石川（いしかわ）

　だし汁（じる）に紅白（こうはく）のおもちを入（い）れただけのシンプルなお雑煮（ぞうに）です。赤（あか）い色（いろ）のおもちはとても珍（めずら）しいです。金沢市（かなざわし）では、紅白（こうはく）の鏡（かがみ）もちも見（み）られます。

　（３）関東地方（かんとうちほう）に多（おお）い角（かく）もち＋すまし汁（じる）

東京（とうきょう）

　四角（しかく）いもちを焼（や）いて、だし汁（じる）にしょうゆや、みりんなどで味付（あじつ）けしたお雑煮（ぞうに）は、関東地方（かんとうちほう）でよく食（た）べられています。

　（４）関西地方（かんさいちほう）に多（おお）い丸（まる）もち＋白（しろ）みそ

京都（きょうと）

　丸（まる）もちを煮（に）て、だしに白（しろ）みそで味付（あじつ）けした汁（しる）というお雑煮（ぞうに）は、関西地方（かんさいちほう）に多（おお）いです。具材（ぐざい）も丸（まる）く切（き）るのは、「家庭円満（かていえんまん）」や「ものごとを丸（まる）く収（おさ）める」ことを願（ねが）ったためといわれています。

　（５）きなこをつけて食（た）べる

奈良（なら）

　だし汁（じる）に白（しろ）みそで味付（あじつ）けした汁（しる）に、おもちや具（ぐ）が入（はい）るのは京都（きょうと）に似（に）ています。おもちをきなこにつけて食（た）べます。

　（６）おもちの中（なか）にはあんこ

香川（かがわ）

　いりこでとっただしに、白（しろ）みそで味付（あじつ）けした汁（しる）に入（はい）るのは、あんこ入（い）りのおもちです。

　（７）お汁粉（しるこ）みたいなお雑煮（ぞうに）

鳥取（とっとり）

　砂糖（さとう）で煮（に）た小豆（あずき）が入（はい）った甘（あま）いお雑煮（ぞうに）です。具（ぐ）はありません。

　（８）特産（とくさん）のカキが具（ぐ）

広島（ひろしま）

　すまし汁（じる）に入（はい）る具（ぐ）の主役（しゅやく）は、広島（ひろしま）の特産品（とくさんひん）のカキです。

　（９）変（か）わったお雑煮（ぞうに）ナンバー１

福岡（ふくおか）朝倉市（あさくらし）

　粕谷（かすや）さんが一番（いちばん）変（か）わったお雑煮（ぞうに）としてあげるのが、茶（ちゃ）わん蒸（む）しのようなお雑煮（ぞうに）です。茶（ちゃ）わん蒸（む）しのように卵液（らんえき）の中（なか）に、具（ぐ）とおもちを入（い）れ蒸（む）してあります。

　（１０）お雑煮（ぞうに）の代（か）わりに中身汁（なかみじる）

沖縄（おきなわ）

　沖縄県（おきなわけん）では、お雑煮（ぞうに）を食（た）べる習慣（しゅうかん）がありません。代（か）わりに食（た）べるのがブタの内臓（ないぞう）を具（ぐ）にした中身汁（なかみじる）です。汁（しる）はかつおで取（と）っただしです。