Q ハリセンボンは本当に針が1000本あるのですか。(大阪府豊中市、小4、男子)
300~400本、寝ている針が立つ
A ハリセンボンとは、世界中の熱帯から温帯域の浅い岩場やサンゴ礁がある場所に暮らしているフグ目ハリセンボン科に分類される魚の総称です。針が立っていない時は、かわいい癒やし系の顔をしていますが、ひとたび膨らむとトゲトゲの針に覆われた姿になるハリセンボン。実は肉食性で、頑丈な歯で貝類や甲殻類などの殻をかみ砕いて食べます。
大阪市内にある世界最大級の水族館「海遊館」では、ハリセンボン約30匹を飼育しています。海遊館で魚類担当飼育員のサブマネジャー、北谷佳万さん(50)にハリセンボンの針の数やその仕組みについて教えてもらいました。
体にある針が由来となり、ハリセンボンと名付けられましたが、針の数は、300~400本程度です。残念ながら、実際には1000本もありません。
この針は、体の中に隠されているのではなく、口から海水や空気を吸い込むことで体を膨らませ、体表に沿って寝ている針が立ち上がる仕組みになっています。体の中から針が飛び出るわけではありません。
どんな時に針を立たせるかというと、ハリセンボンよりも大きい肉食性の魚などに襲われた時です。針を立たせて身を守るのです。その他、水温が変化するなど環境が変わり、ストレスを感じた時などにも膨らんで針を立たせます。
ハリセンボンの膨らみが、どれくらいで収まるのかは、状況にもよります。驚いて膨らんだ時は落ち着き次第、収まりますし、敵への威嚇で膨らんだ時は、相手がいなくなるなどすれば収まります。
ハリセンボンの針はとても頑丈です。針はウロコが変化したもので、非常に硬く、簡単に折れることはありません。
この針で、他の魚たちや飼育員を傷つけることがあるかも、と心配する読者もいるかもしれませんが、心配は無用です。実は、ハリセンボンは、海遊館の水槽内で膨らむことがほとんどないのです。なので、水槽内の他の生き物や魚を扱う飼育員がケガをしたことはありません。
時々、ハリセンボンが膨らむ姿を見たいのか、水槽のアクリル板をバンバンとたたくお客さんがいるそうです。たたく音が刺激となって膨らむことはありません。不必要なストレスを与えないよう、そっと観察してあげてくださいね。【長尾真希子】