澤田克己 毎日新聞 論説委員
新型コロナウイルスの感染症にかかっているかどうか、イヌが判定してくれるようになるかもしれません。世界では、そんな実験が行われています。
イヌの鼻は、人間には分からないかすかなにおいをかぎ分けることができます。その能力を使って麻薬や爆発物を探すよう訓練されたイヌが空港などで働いているのです。
実は、病気にかかった人は健康な時とは違うにおいを出しています。においは、吐く息や汗、おしっこに付きます。病気の種類によって、においも変わってくるそうです。
今までにも、マラリアや一部のがんを見つけるよう訓練されたイヌはいました。
だから新型コロナの世界的流行が起きた時、イヌを訓練して病気の人を見つけられないかと考えた人たちがいたのです。
フィンランドの首都ヘルシンキの空港では昨年9月から、新型コロナ用に特別な訓練を受けたイヌ3匹が働き始めました。それまでは、がんにかかっているかどうかを判定していたイヌたちだそうです。
飛行機を降りた乗客にウエットティッシュのような薄いシートで腕や首筋をふいてもらい、汗をつけます。それをコップのような容器に入れてイヌの前に置いて、においをかがせます。
その客がコロナの感染症にかかっていなければ、イヌは素通り。陽性だったら、コップの周囲を前脚でひっかいたり、おすわりをしたりして知らせてくれるのです。
最初の1か月で2000人あまりを検査し、病院などで行うPCR検査と同じくらいの正しさだったそうです。
南アメリカのチリや中東レバノンの空港でも、イヌたちによるコロナ検査が始まっています。
まだ検査した数が少ないので、もっと実験を重ねなければいけません。でも、イヌの検査でわかるなら、簡単だし、時間もかかりません。有効性が確認されれば、世界中の空港でイヌたちが活躍する姿を見ることができるようになるでしょう。
韓国・ソウル特派員を通算8年半、スイス・ジュネーブ特派員を4年務めました。専門は韓国、北朝鮮ですが、ジュネーブでは国連も取材。趣味は囲碁と旅行。キムチが大好き。1967年生まれ。