◆東北文化学園大学総合発達研究センター付属国見の杜クリニック(宮城県仙台市) 木伏結さん(35)
教材(きょうざい)を使(つか)って子(こ)どもと訓練(くんれん)をする木伏(きふし)さん。訓練(くんれん)は1対(たい)1で、40分(ぷん)かけて行(おこな)います=写真(しゃしん)は全(すべ)て木伏(きふし)さん提供(ていきょう)
相手を知り楽しく訓練
言語聴覚士は、言葉のコミュニケーションが難しい人を訓練で助けます。病気や事故で脳が傷つき言葉が出ない、生まれつきの障害や病気で発音や飲み込みがうまくできないなど、扱う分野は多くあります。そのために幅広く専門的な知識が必要で、医学分野に加え、心理学、音声学、言語学などを学びます。
木伏さんは、発達障害や言葉をなめらかに話せない吃音症などがある、2歳~高校2年生を担当しています。それぞれの問題が、耳、脳、口の動かし方のどこから来ているのかを見極め、一人一人に合わせて訓練の内容を考えます。言葉が出ない子は、絵の描かれたカードや人形を使って物を認識することから始め、単語を理解し、文章にする練習をします。口の動かし方に問題がある子は、鏡を使って正しい動かし方を練習したりします。訓練は月に2回、2年くらい関わることが多いそうです。訓練が楽しいと思ってもらうように、その子が好きなものの写真を集めて教材を手作りすることもあります。
訓練(くんれん)に使(つか)う教材(きょうざい)は、絵(え)の描(か)かれたカード
木伏さんが心がけているのは、相手を理解したいという気持ちを持つことです。コミュニケーションにはその人らしさが表れます。こうした方がいいと決めつけるのではなく、よりよい生活や、楽しいやりとりのためには、何ができるようになるといいのかを理解しようとしています。
うまく言えなくて物を投げていた子が「こうしたい」と伝えられるようになるなど、「できた」「伝わった」という瞬間に立ち会える感動の多い仕事と言います。特に印象的だったのが、訓練の場所を「言葉の遊園地」と言ってくれた子で、楽しい訓練になるように心がけている木伏さんにとって、うれしかった経験です。【田嶋夏希】
周(まわ)りの大人(おとな)の理解(りかい)も大切(たいせつ)です。木伏(きふし)さんは子(こ)どもの保護者(ほごしゃ)や、幼稚園(ようちえん)、保育園(ほいくえん)の先生(せんせい)とも面談(めんだん)を行(おこな)い、患者(かんじゃ)のサポートの仕方(しかた)をアドバイスします
この仕事につくには
国家試験に合格し「言語聴覚士資格」を取得します。受験資格は、高校卒業後に、専門的な知識が得られる大学や短大などを卒業、または、一般の大学卒業後に専門学校や大学院の専攻科などを卒業することで得られます。
メッセージ
相手のことを知りたい、理解したいという気持ちでお友達や身近な人に接してほしいと思います。言語聴覚士の数は少なく、特に子どもの分野で働く人は少ないので、目指す人が増えてほしいです。
プロフィル
1985年 宮城県生まれ
2004年 国際医療福祉大学言語聴覚学科入学
2008年 大学卒業後、千葉県の亀田メディカルセンターで言語聴覚士として働き始める
2013年 認定言語聴覚士の資格を取得
2014年 東北文化学園大学大学院に進み、言語聴覚関連の研究をする
2017年 同大学国見の杜クリニックに勤務
ある一日
10:00 出社(育児のために短時間勤務中で1時間遅れて出社します)
その日の訓練の準備や他のスタッフとのミーティング
11:00 発達障害の子の訓練
12:20 昼食
13:20 吃音のある子の訓練
14:40 ダウン症の子の訓練
16:00 発達障害の子の訓練
17:00 その日の訓練記録を作成
18:00 業務終了