バイオリンを手(て)にする吉村(よしむら)妃(ひ)鞠(まり)さん=東京都港区(とうきょうとみなとく)で、幾島(いくしま)健太郎(けんたろう)撮影(さつえい)
慶応義塾幼稚舎(東京都渋谷区)に通う小学3年生、吉村妃鞠さん(9)は、国内外のコンクールで頂点に立ち、バイオリニストとして歩み始めています。毎小の読者でもある吉村さんは「世界で活躍できるバイオリニストになりたい」と夢を語ります。【大熊真里子】
新日本フィルと初協演
東京都港区のサントリーホールで1月30日、赤い衣装を身にまとった吉村さんが、大人ばかりのオーケストラにまじってバイオリンを奏でました。新日本フィルハーモニー交響楽団との初協演で、演目はイタリアの作曲家、パガニーニのバイオリン協奏曲第1番の第1から第3までの全楽章。30分ほどの曲を弾ききると、ホールは聴く人たちの大きな拍手に包まれました。
吉村さんは何度もカーテンコールに応え、深々と頭を下げました。「この舞台に立つことが、どれだけ重要なことかと考えて練習してきました。拍手をいっぱいもらえて、とてもうれしかったです」。吉村さんは満足そうに話しました。
1年かけマスター
1年ほど前、新日本フィル音楽監督の上岡敏之さんから、パガニーニのバイオリン協奏曲第1番の演奏を頼まれました。吉村さんは、第1楽章については海外のステージなどで演奏したことがありました。ただ、第3楽章までは長い演奏になることから、「今までは10分ほどの演奏ばかりだったので、無理ではないか」との不安もよぎりました。
それでも吉村さんは前向きに練習に取り組み、1年ほどかけて全楽章を弾けるようになりました。体が小さい吉村さんは、2分の1の大きさのバイオリンを使っていますが、この日は迫力ある音色を響かせました。「新日本フィルのみなさんと演奏できて、とても楽しかったです。いろいろなオーケストラの方たちと協演したい」と先を見すえています。
元気もらえた
昨年から新型コロナウイルスの感染が世界的に広がり、音楽に携わる人たちを取り巻く環境は、演奏の機会が少なくなるなど厳しくなっています。新日本フィルでは、団員の有志が、自宅から米津玄師さんの「パプリカ」の合奏動画を作ったこともありました。新日本フィルで広報を担当している竹内里枝さんは「新型コロナの影響で思うように演奏できなかった団員たちも、吉村さんとの協演で元気をもらえました」と喜びました。=2面に一問一答
プロフィル
2011年生まれ、東京都出身。バイオリニストのお母さんの手ほどきを受け、3歳からバイオリンを習い始めました。2019年にロシアで開かれたシェルクンチク国際音楽コンクールなど、国内外39のコンクールで全て1位に。オーストリアのザルツブルク音楽祭など、海外での演奏も重ねています。幼いころから活字に親しみ、日本漢字能力検定(漢検)9級に国内史上最年少の4歳で満点合格を果たしました。