5月3日は憲法記念日。1947年のこの日、日本国憲法が施行(使い始めること)されました。いま、憲法と美術作品を組み合わせた新しいタイプの本が注目を集めています。全103条が読み仮名付きの大きい文字で書かれていて、作品を味わいながら憲法に親しむきっかけになりそうです。
思想(しそう)などの自由(じゆう)をうたう19条(じょう)は、人間(にんげん)のさまざまな表情(ひょうじょう)を彫(ほ)り出(だ)した作品(さくひん)「円(えん)環(かん)カプリス」で表(あらわ)しました
この本は、2019年11月に発売された「日本国憲法」(TAC出版)です。海外からの応募も多いデザインの国際的な賞「東京TDC賞2021」で今年4月、3750作品の中からグランプリを受賞しました。
戦後の69作品
本では、前文から103条までが、日本語と英語で書かれ、難しい言葉には説明が付いています。右ページに条文、左ページにそれに合わせた美術作品があり、ゆったりとしたつくりです。戦後日本の絵画、映画、写真など69作品で、本の最後に作品ごとの解説もあります。
中心となって編集したグラフィックデザイナーの松本弦人さん(60)は「国の形を表す憲法は生活の土台になっています。戦後の美術作品は、今の憲法の下で生み出されたもので、社会や政治と密接にかかわる作品も多いです」と話します。
9条(じょう)2項(こう)と、小沢剛(おざわつよし)さんの作品(さくひん)「ベジタブル・ウェポン」∥写真(しゃしん)はいずれもTAC(タック)出版提供(しゅっぱんていきょう)
たとえば、戦争の放棄と戦力を持たないことをうたう9条の2項では、野菜とバナナでつくられた銃を持った女性の写真が載っています。その地域の食材で銃をつくり撮影し、銃をばらして調理し食べるというプロジェクトの一作品です。地域、食、戦争などのテーマがユーモラスに、かつ繊細に表現されています。
赤塚不二夫(あかつかふじお)さんの「天才(てんさい)バカボン」に出(で)てくる警察官(けいさつかん)
公務員による残虐な刑罰を禁じた36条には、赤塚不二夫さんの漫画「天才バカボン」に登場する警察官のイラストです。何かあるとすぐ拳銃を撃ちまくるキャラクターがインパクトを与えます。
憲法は国民に基本的人権を保障しています。97条では、それは人々が長年努力して得た成果であり、永久の権利としています。これには、女子学生の髪の毛の分け目の先にあぜ道が続く印象的な絵を添えています。まっすぐに続く道に「永久」の意味を重ねました。
全文読んでみて
松本さんは「憲法の全文を読んでほしいです。作品と一緒に味わうことで、飽きずに読めたり、見え方が変わったり、記憶に残りやすくなったりすると思います」と本に込めた思いを語ります。また、「小学生のみなさんに条文は少し難しいかもしれませんが、作品は面白いものもあるので、手にとってほしいです」と話します。【下桐実雅子】