インドネシアからの留学生(りゅうがくせい)(右(みぎ))に支(ささ)えてもらいながら、ニラチヂミをほおばる子(こ)ども=愛媛県松山市(えひめけんまつやまし)で
日本へ学びに来た留学生が母国の料理を作り、子どもたちに食べてもらう「国際子ども食堂」が3月、愛媛県松山市にオープンしました。子どもが一人で食事を取る「孤食」をなくすとともに、新型コロナウイルスのせいで孤立しがちな留学生をつなぎ、きずなを深める全国でもユニークな取り組みです。
「いいにおいー」「マシッソヨ!(おいしい)」。4月上旬、松山市中心部に近い住宅モデルルーム。夕食を囲む子どもたちの笑顔が、マスクごしにはじけました。この日のメニューは「ニラチヂミ」と鶏肉を使った「タッカルビ」。韓国人留学生のチェ・ユンジェさん(22)が、日本人の学生ボランティアらと協力しながら腕によりをかけて作りました。チヂミをほおばった石井里俐ちゃん(3)は「おいしい」と顔をほころばせ、チェさんもうれしそうです。
国際子ども食堂は週1回のペースで開催し、毎回の参加者は50人ほど。韓国、インドネシアやインド、ベトナムなど7か国の留学生が各国の料理を調理し、親が忙しいなど支援が必要な子どもたちが集います。手指の消毒やマスク着用、空気の入れ替えなど感染対策を徹底しながら運営しています。
発起人は市民団体「松山さかのうえ日本語学校」(松山市)代表の山瀬麻里絵さん(33)。愛媛出身の山瀬さんは首都圏を中心に在留外国人の日本語教育、生活支援などに取り組んできましたが、2020年に「地元に外国人の居場所を作りたい」と里帰り。「夕食を子どもが一人で食べている世帯がある」と聞き、留学生、子ども双方の「居場所」になる食堂の開設を思い立ちました。
留学生に笑顔
新型コロナのせいで、留学生の多くは孤独になやんでいます。
「この1年、家族にも友達にも会えずさみしかった」。インド人留学生のマティン・ソフィアさん(31)は19年9月に来日。20年4月に愛媛大学に入学しましたが、授業は全てオンラインになりました。同級生は画面の向こう。母国から遠く離れての1人ぐらしが続く中、大学からのメール案内で国際子ども食堂を知りました。顔を出すと、自分と似た状況の留学生が多く、生活情報の共有もできました。「何より友達がたくさんできたことがうれしい。日本語の練習にもなる」と喜んでいます。
全国のモデルに
NPO法人「全国こども食堂支援センター・むすびえ」(東京都)によると、全国各地に子ども食堂は4960か所あります(20年現在)。むすびえ広報責任者、三島理恵さんは「留学生が抱える課題の解決にもつなげるのは新しい提案。子ども食堂は地域にくらす多様な人たちが参画できる受け皿になる」と指摘し、モデルケースとして注目しています。【遠藤龍】