よく聞くＰＴＡって？

　みなさんは学校（がっこう）で「ＰＴＡ」という言葉（ことば）を耳（みみ）にしたことがあるでしょう。どうやらお父（とう）さんやお母（かあ）さんが参加（さんか）していて、その仕事（しごと）のため学校（がっこう）にも行（い）っているようです。ＰＴＡって何（なに）をしているのでしょうか。ＰＴＡに詳（くわ）しいライターの大塚（おおつか）玲子（れいこ）さんに聞（き）いてみました。【田村彰子（たむらしょうこ）】

ＰＴＡってどういう意味（いみ）なの？

　英語（えいご）の「Ｐａｒｅｎｔ（ペアレント）（親（おや））Ｔｅａｃｈｅｒ（ティーチャー）（先生（せんせい））Ａｓｓｏｃｉａｔｉｏｎ（アソシエーション）（組織（そしき））」の頭（かしら）文字（もじ）をとったもので「保護者（ほごしゃ）と学校（がっこう）の任意団体（にんいだんたい）」です。それぞれ対等（たいとう）な立場（たちば）で話（はな）し合（あ）いをしています。親（おや）は、お父（とう）さんお母（かあ）さんだけではなく、おじいちゃんおばあちゃんが「保護者（ほごしゃ）」でもいいです。用務員（ようむいん）さんなど、先生（せんせい）以外（いがい）の職員（しょくいん）が加入（かにゅう）している学校（がっこう）もあるそうです。児童（じどう）、生徒（せいと）は参加（さんか）していません。

　よくあるＰＴＡの組織（そしき）は、会長（かいちょう）や副会長（ふくかいちょう）などの役員（やくいん）がいる本部（ほんぶ）と各種（かくしゅ）の委員会（いいんかい）があります。保護者（ほごしゃ）は委員会（いいんかい）に所属（しょぞく）することが多（おお）いです。

　間違（まちが）えやすいのは「保護者（ほごしゃ）会（かい）」です。各（かく）クラスの担任（たんにん）が、保護者（ほごしゃ）を招（まね）いて懇談（こんだん）する行事（ぎょうじ）が「保護者（ほごしゃ）会（かい）」で、組織（そしき）であるＰＴＡとは別物（べつもの）です。

いつから学校（がっこう）にあるの？

　「ＰＴＡ」というかたちになったのは、戦後（せんご）です。「学校（がっこう）後援会（こうえんかい）」や「父兄（ふけい）会（かい）」といった組織（そしき）は、それより前（まえ）にも多（おお）くの学校（がっこう）にありました。

　第二次世界大戦（だいにじせかいたいせん）で敗戦（はいせん）国（こく）になった日本（にっぽん）に、アメリカは教育（きょういく）の専門家（せんもんか）を派遣（はけん）しました。その中（なか）で１９４６年（ねん）、当時（とうじ）日本（にっぽん）を占領（せんりょう）していた連合国軍総司令部（れんごうこくぐんそうしれいぶ）（ＧＨＱ）が、日本（にっぽん）の役所（やくしょ）の文部省（もんぶしょう）（今（いま）の文部科学省（もんぶかがくしょう））にアメリカのＰＴＡについて説明（せつめい）し、日本（にっぽん）でも結成（けっせい）するように働（はたら）きかけました。ＰＴＡ発祥（はっしょう）の地（ち）はアメリカです。

　文部省（もんぶしょう）は「父母（ふぼ）と先生（せんせい）の会（かい）委員会（いいんかい）」という部署（ぶしょ）を設置（せっち）し、全国（ぜんこく）の都道府県知事（とどうふけんちじ）にＰＴＡの作（つく）り方（かた）を知（し）らせました。この結果（けっか）、４８年（ねん）には、全国（ぜんこく）の小（しょう）・中学校（ちゅうがっこう）の７割（わり）近（ちか）くにＰＴＡが置（お）かれています。

　現在（げんざい）、学校（がっこう）によっては「ＰＴＡ」という名称（めいしょう）を使（つか）っていないケースもあります。しかし「ＰＴＡ」と同（おな）じような位置（いち）づけの団体（だんたい）は、ほとんどの学校（がっこう）にあります。

どんな活動（かつどう）をしているの？

　学校行事（がっこうぎょうじ）のお手伝（てつだ）い、保護者（ほごしゃ）のための勉強会（べんきょうかい）の運営（うんえい）、広報（こうほう）紙（し）の発行（はっこう）、備品（びひん）の寄付（きふ）などをしています。

　例（たと）えば運動会（うんどうかい）では、ＰＴＡのメンバーがテントを張（は）ったり、校外（こうがい）から来（く）るゲストの座席（ざせき）を出（だ）したりします。子（こ）どもが参加（さんか）できるお祭（まつ）りやイベントを開（ひら）くこともあります。

　また「ベルマーク活動（かつどう）」に取（と）り組（く）んでいるＰＴＡは多（おお）いようです。商品（しょうひん）のパッケージについているベルマークを集（あつ）め、点数（てんすう）分（ぶん）の備品（びひん）と交換（こうかん）して学校（がっこう）に贈（おく）り、子（こ）どもたちの学（まな）ぶ環境（かんきょう）をより良（よ）くしています。バザーを開（ひら）き、物品（ぶっぴん）の売上金（うりあげきん）で学校（がっこう）に備品（びひん）を寄付（きふ）することも珍（めずら）しくありません。

　ＰＴＡ活動（かつどう）の内容（ないよう）はそれぞれの団体（だんたい）に任（まか）されています。保護者（ほごしゃ）向（む）けの子育（こそだ）て勉強（べんきょう）会（かい）や、学校（がっこう）の先生（せんせい）とのお茶会（ちゃかい）というように、さまざまな企画（きかく）が考（かんが）えられています。大塚（おおつか）さんは「活動（かつどう）を通（つう）じて、保護者（ほごしゃ）同士（どうし）が交流（こうりゅう）を深（ふか）めるだけでなく、役員（やくいん）になると学校（がっこう）の先生（せんせい）ともコミュニケーションを図（はか）ることができます」と、ＰＴＡの良（よ）い点（てん）を説明（せつめい）します。

お母（かあ）さんばかり参加（さんか）している気（き）がするけど

　国（くに）の男女共同参画白書（だんじょきょうどうさんかくはくしょ）によると、１９８０年（ねん）の時点（じてん）で専業主婦（せんぎょうしゅふ）がいる家庭（かてい）が１１１４万（まん）世帯（せたい）、お父（とう）さんとお母（かあ）さんが働（はたら）いている共働（ともばたら）き世帯（せたい）が６１４万（まん）世帯（せたい）でした。大塚（おおつか）さんは「戦後（せんご）の日本（にっぽん）の家庭（かてい）では、お父（とう）さんは外（そと）で仕事（しごと）、お母（かあ）さんは家事（かじ）や育児（いくじ）という役割（やくわり）分担（ぶんたん）が進（すす）み、育児（いくじ）の一（ひと）つであるＰＴＡはお母（かあ）さんの役割（やくわり）になっていきました。その名残（なごり）が、共働（ともばたら）き家庭（かてい）の方（ほう）が多（おお）くなった今（いま）でも残（のこ）っています」と話（はな）します。

　活動（かつどう）する時間（じかん）は、子（こ）どもが学校（がっこう）に行（い）っている平日（へいじつ）の昼間（ひるま）がメインになっています。ＰＴＡで多（おお）くの活動（かつどう）を担（にな）っている専業主婦（せんぎょうしゅふ）のお母（かあ）さんたちが、平日（へいじつ）の日中（にっちゅう）の都合（つごう）が一番（いちばん）良（よ）かったことも影響（えいきょう）しているとみられます。

　最近（さいきん）では、お父（とう）さんが中心（ちゅうしん）の保護者（ほごしゃ）の会（かい）「おやじの会（かい）」も増（ふ）えています。しかし、まだまだＰＴＡへのお父（とう）さんの参加（さんか）は進（すす）んでいないようです。

参加（さんか）するのは大変（たいへん）じゃないの？

　少子化（しょうしか）に加（くわ）え、共働（ともばたら）き、ひとり親（おや）の世帯（せたい）が増（ふ）えていて、ＰＴＡに積極（せっきょく）的（てき）に協力（きょうりょく）できる保護者（ほごしゃ）が減（へ）っています。このため、活動（かつどう）の内容（ないよう）を見直（みなお）す傾向（けいこう）が強（つよ）まっています。

　ＰＴＡに代（か）わるシステムとして、保護者（ほごしゃ）全員（ぜんいん）に役割（やくわり）を等（ひと）しく分（わ）けるのではなく、やりたい人（ひと）だけが参加（さんか）するボランティア制（せい）を取（と）り入（い）れる組織（そしき）が出（で）てきました。例（たと）えば、ベルマーク活動（かつどう）が敬遠（けいえん）されがちですが、「作業（さぎょう）中（ちゅう）に他（ほか）の保護者（ほごしゃ）と会話（かいわ）できて楽（たの）しい」という人（ひと）もいるからです。通学（つうがく）時（じ）の見守（みまも）りや本（ほん）の読（よ）み聞（き）かせなど、自分（じぶん）が参加（さんか）できる活動（かつどう）を選（えら）べる団体（だんたい）もあります。

　また先生（せんせい）の負担（ふたん）をなくすため、ＰＴＡではなく「ＰＡ（Ｐａｒｅｎｔ（ペアレント）　Ａｓｓｏｃｉａｔｉｏｎ（アソシエーション））」と保護（ほご）者（しゃ）だけの組織（そしき）を作（つく）ったり、地域住民（ちいきじゅうみん）が参加（さんか）したりするケースがあります。そして欠（か）かせないのは作業（さぎょう）のＩＴ（情報技術（じょうほうぎじゅつ））化（か）です。オンライン会議（かいぎ）や紙（かみ）ではない広報誌（こうほうし）を導入（どうにゅう）し、保護者（ほごしゃ）が関（かか）わりやすい環境（かんきょう）を整（ととの）える動（うご）きが目立（めだ）っています。＜え・内山大助＞