波田野(はたの)さんが「もっとみんなに知(し)ってもらいたい」とつくった「児童労働(じどうろうどう)新聞(しんぶん)」
親が働き、子どもは学校に行く――。日本では当たり前のようなことが、世界には当たり前ではないところがあります。子どもが働かされることを「児童労働」といいます。6月12日は「児童労働反対世界デー」。児童労働の問題を知り、なくすために動き出した小学6年生がいます。【田村彰子】
「児童労働(じどうろうどう)」について調(しら)べたことを50㌻にわたってまとめた波田野(はたの)優(ゆう)さん
「この地球から児童労働をなくせ!」。「児童労働新聞」という題字をしたカラフルな紙面に、大きな見出しが書かれています。この新聞をつくったのは、東京都杉並区の小学6年生、波田野優さん(11)です。児童労働の現状をまとめ、親から子へ貧しさが受け継がれていく「貧困の連鎖」をテーマにした4コマまんがも描かれています。
「クラスに3人」
児童労働とは、18歳未満の子どもが危ない仕事や、学校に行けなくなるような仕事をすることです。子どもの権利を定める世界共通のルール「子どもの権利条約」は、子どもには児童労働から守られる権利があるとしています。国際労働機関(ILO)は10日、2020年時点の世界で1億6000万人が児童労働をしているとの推計を発表しました。児童労働は減り続けていましたが、20年ぶりに増えてしまったのです。10人に1人が児童労働をしていると考えられ、波田野さんは「学校のクラスで3人ぐらいと考えると、すごく多く感じるはずです」と話します。
S(エス)D(ディー)G(ジー)s(ズ)の目標(もくひょう)4「質(しつ)の高(たか)い教育(きょういく)をみんなに」
国連の持続可能な開発目標「SDGs」は17の目標(ゴール)の8「働きがいも経済成長も」で、あらゆる形の児童労働をなくすことを掲げています。新型コロナウイルスの感染が広がり、貧しい家庭が増えていることなどから、働かされる子どもが増えるおそれがあります。国連は今年を「児童労働撤廃国際年」にもしています。
S(エス)D(ディー)G(ジー)s(ズ)の目標(もくひょう)8「働(はたら)きがいも経済成長(けいざいせいちょう)も」
波田野さんが児童労働の問題を知ったのは、2年前に夏休みの自由研究でアフリカの子どもたちの教育事情を調べたことがきっかけでした。SDGsには目標4「質の高い教育をみんなに」もあり、児童労働をなくすことがより良い教育を受ける子どもたちを増やすことにつながります。
波田野さんは昨年夏、児童労働をテーマに調べたことを自由研究として学校に提出しました。校長先生にお願いし、全校児童が集まる朝会で発表もしました。波田野さんは「日本は、多くの衣類や食べ物を輸入しています。それをつくるために、海外で多くの子どもたちが働かされていることをみんなに知ってほしい」と思っています。=2面につづく