寒さが増し、かぜをひきやすい季節になりました。かぜを早く治そうと薬を飲むこともありますが、その薬は本当に必要でしょうか。必要のない薬を飲むと、薬がききにくくなったり、きかなくなったりすることがあります。
薬がきかなくなることを薬剤耐性といいます。薬剤耐性菌が増えると、抗菌薬(抗生物質)を飲んでも治りにくかったり、治らなかったりします。また、手術をする時に術後の感染症を防ぐために抗菌薬を使いますが、薬剤耐性菌を持っていると抗菌薬を飲んでも予防にならず、手術ができなくなることがあります。
ウイルスにはきかない
薬剤耐性菌が増える原因の一つは、必要ない時に抗菌薬を飲むことです。その代表例はかぜです。感染症の原因となるのは細菌やウイルスですが、抗菌薬は細菌をやっつけるための薬なので、ウイルスが原因となるかぜやインフルエンザにはききません。抗菌薬を飲むといつも薬剤耐性菌が増えるわけではありませんが、抗菌薬を使う機会が多いと、耐性菌が増える可能性も高まります。
国立国際医療研究センター病院AMR(薬剤耐性)臨床リファレンスセンターの情報・教育支援室長、藤友結実子さんは「子どもは大人に比べると熱が出ることが多いので、抗菌薬を出される機会が多く注意が必要です。抗菌薬は本当に必要な時に必要な量を使うことが大事です」と話します。
抗菌薬が必要と診断され、出された場合は、医師の指示にしたがい、途中でやめたりせず最後まで飲むことが重要です。薬を出されないと不安かもしれませんが、医師が抗菌薬はいらないと判断したらそれにしたがいます。抗菌薬は、それぞれの人の病状に合わせて出されます。自分に出された抗菌薬をとっておいたり、人にあげたり、もらったりするのはやめましょう。
手洗いの習慣を
「抗菌薬を使わないためには、なるべく感染症にかからないことです。日ごろから、家に帰ってきた時やご飯の前、トイレの後など、手を洗う習慣をつけてください」
2013年には、薬剤耐性菌によって世界で年間約70万人が死亡したとされました。国連は19年4月、このまま何も対策をとらなければ、50年までに世界で年間1000万人が死亡するおそれがあると警告しました。日本では毎年11月を「薬剤耐性対策推進月間」と定めて、薬剤耐性菌を増やさないための対策を進めています。【篠口純子】