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疑問氷解

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外国の人のインタビューが、「〇〇だよ」などに訳されることが多いのは元の英語がタメ口だからですか

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 Q 外国がいこくひとのインタビューが、「〇〇だよ」などにやくされることがおおいのはもと英語えいごがタメぐちだからですか。(岡山市おかやまししょう6、熊代くましろゆうさん)

スーパースターのイメージから「俺(おれ)」「だぞ」などの言葉(ことば)づかいで訳(やく)されがちなウサイン・ボルト選手(せんしゅ) 拡大
スーパースターのイメージから「俺(おれ)」「だぞ」などの言葉(ことば)づかいで訳(やく)されがちなウサイン・ボルト選手(せんしゅ)

イメージにわせ、むかし翻訳ほんやくにルーツ

 A もと言葉ことばが、ともだちはなすような「タメぐち」とばれる口調くちょうだからではなく、キャラクターや状況じょうきょうわせて、日本語にほんごやくひとがそのような口調くちょうにしているのです。たとえば、英語えいごの「I am a cat」は、「わたしねこです」だけでなく、「はいねこである」「おいらはねこだぜ」などにやくすことができます。

 NHK放送ほうそう文化ぶんか研究所けんきゅうじょでは太田真希おおたまきさんが、2016ねんのリオデジャネイロ・オリンピック(五輪ごりん)で、陸上りくじょう男子だんし短距離たんきょりのウサイン・ボルト選手せんしゅのインタビューがやくされたテレビ番組ばんぐみのテロップを調しらべました。335のぶんのうち、「(だ)よ」「んだ」「(だ)ぞ」など「タメぐち」のような口調くちょうのものが101ありました。世界記録せかいきろくち、独特どくとくのポーズで王者おうじゃのようにふるまうボルト選手せんしゅのイメージとむすびつきやすい、男性だんせいらしさをあらわ日本語にほんごえらばれる傾向けいこうがありました。

 ボルト選手せんしゅかぎらず、一般いっぱん外国人がいこくじん翻訳ほんやくでも、「〇〇だよ」「〇〇さ」などの言葉ことばたしかに目立めだちます。大阪大学おおさかだいがく教授きょうじゅ日本語学者にほんごがくしゃ金水きんすいさとしさんは「外国人がいこくじんはこうはなす」という共通きょうつうのイメージを日本人にっぽんじんっていて、それにかたちやくされているためと指摘してきします。「わしは〇〇じゃ」とはな博士はかせ実際じっさいにはたことはないのに、漫画まんがやアニメにてくる「鉄腕てつわんアトム」のおちゃみず博士はかせや「名探偵めいたんていコナン」の阿笠あがさ博士はかせのセリフにれることで、博士はかせはなかたのイメージができあがります。このように、特定とくてい人物じんぶつぞうおもかべる言葉ことばづかいを、金水きんすいさんは「役割語やくわりご」と名付なづけました。

 「だよ」「さ」「わ」などが使つかわれる外国人がいこくじん翻訳ほんやく口調くちょう役割語やくわりごひとつで、明治めいじから昭和初期しょうわしょき翻訳ほんやくしょにルーツ(はじまり)があると金水きんすいさんはいます。海外かいがい文学ぶんがく翻訳ほんやくするときに、したしげな場面ばめんでは、当時とうじ東京とうきょう使つかわれていた「やあ」「〇〇かい」というようなさくなおとこ言葉ことば採用さいようされました。おなじように「〇〇だわ」「〇〇かしら」が、おんなひと言葉ことばとして使つかわれました。その慣習かんしゅうのこつづけ、博士はかせ言葉ことばのようにイメージが共有きょうゆうされてきました。また「さくにはなすことのすくない日本語にほんごとはちが言葉ことばはなしている」ことがつたわりやすいという理由りゆうもあるそうです。

 一方いっぽう太田おおたさんの研究けんきゅうでは「です、ます」とやくされやすい外国人選手がいこくじんせんしゅもいることがかりました。たとえば、オリンピックの難民選手団なんみんせんしゅだん選手せんしゅです。その理由りゆうを「丁寧ていねい言葉ことばづかいにすることで困難こんなん努力どりょくしてきた人物じんぶつだとイメージできるから」と太田おおたさんは指摘してきします。「外国人選手がいこくじんせんしゅAさん」のような、脇役わきやくのような立場たちば登場とうじょうする選手せんしゅ言葉ことばは「役割語やくわりご」がおおいこともかりました。

 機械的きかいてきに「役割語やくわりご」でやくすことには、疑問ぎもんこえもあがりはじめています。アメリカの歌手かしゅのビリー・アイリッシュさんのインタビューを「〇〇だわ」「〇〇とおもうの」と掲載けいさいした雑誌ざっしには、「本人ほんにんのキャラクターとはちがう」というこえおおせられたそうです。多様性たようせい大切たいせつにする社会しゃかいで、翻訳ほんやく仕方しかたにも変化へんかこるかもしれません。【田嶋たじま夏希なつき

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