最近よく聞く「NATO」って何ですか？

　Q　最近（さいきん）よく聞（き）く「NATO（ナトー）」って何（なん）ですか？（読者（どくしゃ））

30か国（こく）が集団防衛（しゅうだんぼうえい）　拡大（かくだい）にロシア反発（はんぱつ）

　A　NATO（ナトー）は北大西洋条約機構（きたたいせいようじょうやくきこう）のことで、「North　Atlantic　Treaty　Organization」の略（りゃく）です。ヨーロッパやアメリカなど30の国々（くにぐに）が集団（しゅうだん）で自分（じぶん）たちを守（まも）る組織（そしき）です。本部（ほんぶ）はベルギーのブリュッセルです。

　NATO（ナトー）の特徴（とくちょう）は、加盟国（かめいこく）のどこかの国（くに）が武力攻撃（ぶりょくこうげき）を受（う）けた場合（ばあい）、全加盟国（ぜんかめいこく）への攻撃（こうげき）とみなして共同（きょうどう）で守（まも）ると決（き）めていることです。このように自国（じこく）が攻撃（こうげき）されなくても、自国（じこく）と密接（みっせつ）な関係（かんけい）にある国（くに）が攻撃（こうげき）されたとき、防衛（ぼうえい）のために共同（きょうどう）で立（た）ち向（む）かうことを「集団的自衛権（しゅうだんてきじえいけん）」といいます。外交（がいこう）を扱（あつか）う日本（にっぽん）の役所（やくしょ）・外務省（がいむしょう）によると、現在（げんざい）、NATO（ナトー）に加盟（かめい）している国（くに）の軍事費（ぐんじひ）は合計（ごうけい）で1兆（ちょう）485億（おく）ドル（約（やく）120兆（ちょう）5775億円（おくえん））、軍隊（ぐんたい）は約（やく）332万人（まんにん）（ともに2021年（ねん）推計値（すいけいち））です。

　NATO（ナトー）は1949年（ねん）に設立（せつりつ）されました。当初（とうしょ）はアメリカ、イギリス、フランスなど12か国（こく）でした。当時（とうじ）、世界（せかい）は自由（じゆう）な経済（けいざい）を支持（しじ）するアメリカを中心（ちゅうしん）とした西側諸国（にしがわしょこく）と、土地（とち）や工場（こうじょう）などの生産手段（せいさんしゅだん）を国（くに）が管理（かんり）する社会主義（しゃかいしゅぎ）を掲（かか）げる旧（きゅう）ソ連（れん）（現在（げんざい）のロシアなど）を中心（ちゅうしん）とした東側諸国（ひがしがわしょこく）が「冷戦（れいせん）」と呼（よ）ばれるにらみ合（あ）いをしていました。NATO（ナトー）は冷戦下（れいせんか）、西側諸国（にしがわしょこく）の安全（あんぜん）を守（まも）るために生（う）まれました。

　89年（ねん）に冷戦（れいせん）が終（お）わり、91年（ねん）に旧（きゅう）ソ連（れん）が崩壊（ほうかい）すると、NATO（ナトー）は92年（ねん）から始（はじ）まったヨーロッパ南東（なんとう）にあるボスニア・ヘルツェゴビナでの紛争（ふんそう）への介入（かいにゅう）など、新（あたら）しい活動（かつどう）を始（はじ）めました。また2001年（ねん）に飛行機（ひこうき）4機（き）がニューヨークのビルなどに突（つ）っ込（こ）んで多数（たすう）の死傷者（ししょうしゃ）を出（だ）した「アメリカ同時多発（どうじたはつ）テロ事件（じけん）」では、これをアメリカへの攻撃（こうげき）と見（み）なし、国際的（こくさいてき）なテロ組織（そしき）がかくまわれているとしてアフガニスタンを攻撃（こうげき）しました。

　1999年（ねん）以降（いこう）は、冷戦中（れいせんちゅう）に旧（きゅう）ソ連（れん）の支配下（しはいか）にあった東（ひがし）ヨーロッパの国々（くにぐに）などがロシアの圧力（あつりょく）から逃（のが）れるため、次々（つぎつぎ）とNATO（ナトー）に加盟（かめい）していきました。2004年（ねん）には旧（きゅう）ソ連（れん）に併合（へいごう）されていたバルト3国（ごく）（リトアニア、ラトビア、エストニア）が加盟（かめい）。旧（きゅう）ソ連（れん）の一員（いちいん）だったジョージアとウクライナも加盟（かめい）を求（もと）め、NATO（ナトー）は08年（ねん）の会議（かいぎ）で両国（りょうこく）の将来的（しょうらいてき）な加盟（かめい）を認（みと）めました。NATO（ナトー）は加盟（かめい）を求（もと）める国（くに）に制限（せいげん）を設（もう）けない方針（ほうしん）をとっています。

　しかしロシアは、NATO（ナトー）が東側（ひがしがわ）に広（ひろ）がっていくことを、自国（じこく）の安全（あんぜん）を脅（おびや）かすものと強（つよ）く反発（はんぱつ）しています。08年（ねん）、ロシアはジョージアと武力衝突（ぶりょくしょうとつ）を引（ひ）き起（お）こしました。また14年（ねん）にはウクライナの重要（じゅうよう）な戦略（せんりゃく）拠点（きょてん）であるクリミア半島（はんとう）に攻（せ）め入（い）って、今（いま）も支配（しはい）しています。

　本来（ほんらい）、ある国（くに）の考（かんが）えを、他（ほか）の国（くに）が武力（ぶりょく）で封（ふう）じ込（こ）めることは許（ゆる）されません。しかしロシアのプーチン大統領（だいとうりょう）は、今回（こんかい）のウクライナへの攻撃（こうげき）ではNATO（ナトー）の拡大（かくだい）を批判（ひはん）し、核戦争（かくせんそう）の可能性（かのうせい）に触（ふ）れるなどしています。今後（こんご）NATO（ナトー）がどのような対応（たいおう）をとるのか、注目（ちゅうもく）を集（あつ）めています。【長岡（ながおか）平助（へいすけ）】