Q チューリップはなぜ種ではなく、球根から育てるのですか。(埼玉県、小4)
同じ色や形の花を種より早く作れる
A チューリップに詳しい、東京農業大学農学部の小池安比古さんに聞きました。
植物は、おしべとめしべが受粉して、実ができて種を作って、次の世代につながっていきます。チューリップにももちろん種はでき、1本の花につき300粒前後の種を作ります。種は命をつないでいくためのものですから、その時の環境の変化に対応できないと絶滅してしまいます。そのため、一つの花から作られた種でも、咲かせてみると花の色やくきの背の高さ、葉の大きさなどが違った花ができます。同じ親から生まれた兄弟が、似ているけれども全然違うのと同じです。
しかし球根から育てる花は、種と違って1本の花の分身で、ほかの花の性質が混ざりません。そのため、全く同じ色や形をした花をたくさん作り出すことができるのです。球根とは、植物の地面の下にある根や葉、くきなどに成長するための栄養分(でんぷん)をためたものです。ためる場所は植物によって違い、チューリップの場合は花が咲き終わった後に、地中の葉の下がふくらんで球根ができます。
さらにチューリップは、種から育てると花が咲くまで5年ほどかかりますが、球根からの場合は秋に植えれば春には花が咲きます。育てるのも、種に比べて難しくありません。
チューリップは、トルコから中央アジアにかかる地域が原産地で、最も人気のある花の一つです。見て楽しむために、人気のある色や形の花が作られます。そのためどんな花が咲くか分からない種から育てずに、分身である球根から人気の花を生産してきました。
ヨーロッパに伝わって17世紀になるとオランダを中心に人気が爆発します。その時代は「チューリップ狂時代」とも呼ばれ、一つで家が買えるほどの値段がつけられた球根もあったといいます。
花の大きさや好みの色などは、時代によって違います。そのため、育種家と呼ばれる人たちがさまざまなおしべとめしべを交配させて種から育て、新しい品種の花の開発を続けています。
現在は地球上に200種類ほどのチューリップがあるといわれていますが、新しい品種が役所などで登録されて市場に出回るまでは20年以上かかるそうです。にもかかわらず、毎年新しいチューリップの品種が生まれています。
小池さんは「新しい種を作る人、球根を育てる人、チューリップを咲かせて売り出す人はそれぞれ分かれていて、そのうえで、みなさんの手元にきれいなチューリップが届いています」と話します。【田村彰子】
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